短編小説B 

□『もっとぎゅっとずっと』
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「…『じゃあ』って、家に帰ってからも…待ってたんだ、隼人が家に来てくれるの」
 遂にはポロポロ涙を流す。

 うー、と唸る綱吉に、キュンと胸を締め付けられ、隼人はそっと腕を伸ばしその華奢な身体を抱きしめた。

「その…悪かったな。気がつかなくて」
(泣くなよ、弱ぇーんだよ…お前に泣かれると)
 柔らかい髪に鼻を埋める。

(俺はお前の事、めちゃくちゃ愛してるんだから)

 昨日は隼人も気が立っていたのだ。追っ払っても追っ払っても終始まとわりつくウザい女共と、綱吉にチョコを渡さんとするハイエナのようなウザい女たちに。(そう、綱吉は気付かなかったが、隼人は綱吉に集るハエたちも一蹴していた)

「それでも家で待ってたのは━…その、姉貴が恋人んトコ行ってて…家に俺1人しか居なかったから━…」
 言いにくそうにゴニョゴニョどもる。
 よしんば、綱吉が来てくれたら、二人きりで恋人同士の夜を過ごせる、と期待していたのだ。

「な…っ///」
 意図を察し、カァアッと頬を染める綱吉。

「悪りィ…メール、すれば良かったな。気が効かねぇで」

 その時にはもう二人して意固地になっていたのだ。
 綱吉はううん、と首を振った。

「オレこそごめん…隼人ばっかり責めたてて」
 素直に謝る。

 悔しかったのだ。コソコソせず気持ちを伝える事のできる女子たちを目の当たりにして。

(隼人はオレのもんだ!って、そう、叫びたかったんだよ)
 そうして広い胸に甘えるように顔を埋める。

「つ…!綱吉…ッ」
 隼人の心臓は、早い鼓動を刻んでいた。ドキドキドキ、その心音は、別の緊張感を二人の間に呼び起こさせる。

(ヤバい…自分からこんな事、誘ってるように、思われるかな!?)
(ヤバい…誘ってるのか!?奥手な綱吉が甘えてくるなんてッ)

「なあ…バレンタインの仕切り直し、今からじゃ駄目か?」
 勿論隼人の家には帰宅したビアンキがいて、事に及ぶ事が出来ない。
 ドキドキしながら柔らかい髪を梳き、その項に指を滑らせる。

「う…///、今日、は…母さんが居るし、家じゃちょっと…、あ…!チョコなら…!」
 頬をピンク色に染め恥じらいながら、バッと照れたように腕の中から逃れようとする恋人に、堪らなく生殺しな気分を味わいながら。

「━…チョコよりも、甘いもんがいい」

「え…う、わっ…!」

 そう言って、ニヤリと笑んで、隼人は形の言い唇で綱吉のそれを捕まえた。




━━━


バレンタイン、書けなかったので(笑)
『幼なじみ』で読みたいと、リクありがとうございました(≧∇≦)

リク頂くと書けるんだなあ…(笑)

【title:睡恋】


 
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