短編小説B 

□『passing rain.』
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「さっき、ハンカチありがとうな。俺家が近所でさ、ちょっとだから大丈夫だろうって思ったんだけど、やっぱ甘かったわ」
 苦笑いの表情を浮かべる山本に、クスッと笑みを漏らす綱吉。

「そうなんだ。どうして雨なのに傘差さないんだろうって、不思議に思ってたよオレ」

「━━━ッ//!」
 トクン!
 クスクス笑う綱吉に、心臓の鼓動が大きくなる山本。

(あれ?あれ? 変なのなー俺━━…)
 胸おかしくなってないか?
 ドキドキ言う心音に首を捻る。

「ボンゴレ中って事は、頭いいんだ、山本君」

「山本でいいぜ。いや、頭はからっきし。俺は野球で特待生だからさ」

「へぇえ…!すごいんだね!」
 綱吉は心から尊敬の眼差しを向ける。運動音痴の綱吉には、スポーツが出来る男の存在は憧れに近いのだ。

 キラキラと瞳を輝かせ賞賛の言葉を述べる綱吉に、(あれー?)山本は胸の鼓動が早くなるのを感じた。


「あ…!ごめん、オレ行かなきゃ、待ち合わせしてるんだ」

「え、ちょっと待って」
 気づいたように時計を見て慌てる綱吉に、山本は思わずその手首を取る。
(うわ細っせ…)
 折れそうなくらい華奢な感触に、山本はカァアッと頭に血を上らせた。

「山本君…?」
 怪訝そうな顔の綱吉。

「ああ…えっと、連絡先。ハンカチ借りたからさ…ケータイ教えてくれる?」

「そんなの気にしなくていいのに…でも、じゃあハイ」
 そう言って携帯の番号を交わす。

「ありがとーな、今度連絡する」

「うん、楽しみにしてるね!じゃあ」
(良い人だぁ…!)
 慌てて去る綱吉の背中に、大きな声を投げかける。

 その声に触発されたかのように、振り返った綱吉は満面の笑みを返した。


 † † †


「遅せぇ…!」
 喫茶店で待っていた隼人は綱吉を見付けた途端、開口一番そう切り出した。














「ごめんって謝ったじゃん。しつこい男は嫌われるよ。あー、オレなんかお腹すいたし」
 しれっとメニューに目を走らせ、ウェイターにココアとパスタを頼む。

「きっ、嫌わ…っ!」
 ガーンッとなる。
 勿論隼人も誰にでもしつこい訳ではない。相手がツナだから、綱吉だから、気が気じゃないのだ。

「……その本屋で会ったってゆー野郎に、ナンパされたんだろ?」

「━…Σナっ!! ナンパなんかされるわけないじゃんっっ、オレ男だよ!?」

 そう言って怒りに燃える姿もめちゃくちゃ可愛いのだ。
(わかんねえんだよ、お前、めちゃくちゃ可愛いんだよ。自分で自分の魅力に、気付いてないだけなんだぜ!?)

 この幼なじみ兼愛しの恋人は、そばにいる時もいない時も、いつだって自分をやきもきさせる。

 隼人はつい綱吉の手を引き寄せてテーブル越しにほっぺにちゅ、とキスをして、「んなあっ!?///」と憤った綱吉にバシバシッと背中を叩かれた。

「でもマジで何話してたんだよ、結局こうして遅れて来たんだし。どんなやつ?」
 後でめちゃくちゃ鳴かせてやる、と思いながらヒリヒリする背中を撫でる。

「話しっていう程話してないよ…あ、でも隼人と同じ学校なんだよ。もしかしたら知ってる人かもね」
 お待たせしました、と運ばれて来たパスタに目を輝かせて綱吉はフォークを手にする。

「同じ? ボンゴレのやつ?」

 眉を顰めコーラを啜る隼人に、フォークを持つ手を休めて綱吉はふわっと微笑む。

「……優しい、濡れても温かい、雨のような人だったよ。山本君っていうんだ。知ってる?」


 山本の名前に、隼人は飲んでいたコーラをぶほあッッと吹き出した。




━━━


山本との出会いでした(笑)
トライアングル楽しいー*´∇`*





 
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