短編小説B
□標的364の妄想
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「そうだよ…オレは、アイツがいない時でも、…未来でも、デイモンとも戦ってきた! アイツがいなくても、必死で、皆を守る為に戦ってきたんだ! それなのに━…っ 」
キュッと唇を噛みしめて俯く。
(ひょっこり帰ってきたアイツは、何でもない顔をして、父親面して飄々と家族の輪の中に普通に入ってきて…、
それで、当たり前のようにオレの事、グーで殴ったんだ━…!)
拳を握る力を強くして、悔しがる。
「何でだよ…何であんなヤツに負けるんだ!
一体…額のあの炎…っ、信じられない! 今まで母さんとオレを放ったらかしにしておいて…、どの面下げて今更父親面なんか出来るんだ!」
言っている事が支離滅裂だ。話してるうちに、どうしようもなく苛立つ感情が、滅茶苦茶に込み上げてきて、もうツナにも何に対して怒っているのか、自分で自分が分からなくなる。
「…あんな奴に負けるなんて…情けないよ!同盟!? 何で、あんな男と組まなきゃならないんだ!」
はあ、と息を付く。
ひとしきり感情を吐き出すのを待って、山本は、んー、と続けた。
「…ツナはやっぱり親父さんが好きなのなー」
「んなっ!?」
あははー、と破顔する山本に、がーんっとなる。
「今の台詞のっ、どこを聞いたらそうなるんだよ!」
山本!? と目を棒にするツナ。
「だってそうじゃねーか。親父さんに、負けたのが悔しいんだろ? 子供扱いされたのが、悔しいんだ。認められなかった事が、悔しいんだ。ツナは、今まで不在だった親父さんの代わりに、家族を、…皆を、守ってきたんだから」
「もう十分、大人なつもりだったのに、たまにしか現れない親父さんに、当たり前のように負けたのが悔しいんだ。でも…なあ、ツナ。親父ってのは、俺からしてみたら、何時までも前を走っていてもらいたい、何時までも追い越せない存在でいて欲しいもんだぜ?」
しみじみ言う山本に、綱吉ははっとする。
(そうだ……あの悲惨な10年後の未来で、山本のお父さんは……)
「…山本」
山本の気持ちを推し量ったように、名前を呼んで押し黙るツナ。
山本は澄んだ真っ直ぐな瞳でツナを見て、それからへへっと小さく声を出して笑った。
「なあツナ。親父さんと話してみるのな。考えてみたら、ツナと親父さんって、全然今までの事も話してないだろ。今までの戦いも…戦ってきた気持ちも思いも、全部」
なんたって生きているのだ。死んでから後悔しても遅いのを、山本はもう知っている。
人間というのは、生きている限り、人との関係を新しく築いていかなきゃいけない生き物だから。
「…そうだね」
ツナはそう言ってまた布団に仰向けに寝転がる。まだやっぱり悔しくて、今夜は眠れそうにないけど。
「本当にそうだ」
いつか、今思っている事もあの駄目親父に言えたら━…、
そう思ってツナは瞳を閉じる。
そして夜も更けていく薄暗い山本の部屋。カチコチ、時計の音。
「……クソ」
規則正しい寝息の聞こえてくる中そう呟いて、獄寺は悔しげに眉を寄せた。
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本誌ではリボ先生によりツナたんの心情が書かれてますが、こちらは私が勝手に読んで解釈してた妄想文です。
そんなに違和感ない…よね?(笑)
しかしまあ獄くんが不甲斐ない(というか可哀想)な回でしたι空気読もうよ獄くん…ι
せっかくだから載せましたが、今度は獄ツナがらぶらぶしてるといいな、と思っております。
それではまた♪