頂物
□僕たちの関係
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授業も終わり、放課後を知らせるチャイムが校内に響く。
綱吉は、一人で帰ろうと、いつも付いて来る自称右腕が日直なのをいいことに、校舎を後
にする。
(獄寺君には悪いけど、たまには一人で帰りたい時だってあるよ)
うんうんと頷きながら、校門を目指す。
と。
「十代目ぇぇぇ!!ドコですかー?!」
「………あ、獄寺君……」
「十代目ー!!俺も一緒に帰ります!十代目ぇぇ??!!」
「…………ハァ……」
やれやれと首を横に振る。
仕方ないな、獄寺君は。
「獄寺くーん!俺は、こっ……」
一人で帰るのは諦めようと、声を上げ腕を振ろうとした瞬間、強い力にその腕を引っ張ら
れ、
「……っかしいな。……十代目、どこにおられるんだろ。ハッ!まさか本当にお一人で帰
られたのか?!十代目ぇぇぇ!!」
獄寺はそのまま、猛スピードで校門を突っ走っていった。
「………行ったな…」
「…っう゛ぅー!う゛ー…!」
綱吉はというと、声を上げないように口を塞がれ、木の陰へと無理矢理隠されていた。
「……お?悪ぃ、ツナ」
息苦しさに、腕を叩けば、ようやく解放される。
「……ップハァ!……山本?!いきなり何するんだよ!」
「あ〜…悪ぃな、ツナ」
そう言って、苦笑して頭を掻いている山本は、全く悪びれのない顔で。
「本当にビックリしたよ…。獄寺君は一人で行っちゃったし……」
「…だな。ツナ、ここにいんのになー」
「いやいやいや!山本が俺をいきなり引っ張ったからだろ!獄寺君も見つけられずに行っ
ちゃったんじゃないか」
「そっか?あはははは」
「…………」
いつもと変わらない、明るい笑顔に突っ込む気も起きず、苦笑するしかない。
「んなことより、ツナ!これからちょっと付き合ってくれないか?」
「え?」
「獄寺もいなくなったし、2人で放課後デートと洒落込もうぜっ!」
「え?えぇえぇぇ?!デート?!」
その言葉に過剰なまでに反応してしまう。
「と、いうのは、まあ、冗談で……」
「…あ、ああ、冗談…。そう、だよね……!」
冗談だと言われたことに、無意識に気持ちが沈んでいってしまう。
いやいやいや!!
なんでここでガックリ肩落としてるんだよ!俺っ!!
「靴が合わなくなったみたいでさ。新しいの買いに行くのに付き合ってほしいんだけど…
…どうかしたか?」
「…っううん!何でもない!もちろん付き合うよ!」
「そっか。ありがとな!」
山本の笑顔に胸が高鳴る。
その笑顔が嬉しいはずなのに、何だか切ない。
(……どうして、そんな風に思うんだろ)
「…ツナ!何してんだ?おいてくぞー!」
立ち止まった綱吉に、前を歩いていた山本が振り返り、声を上げる。
「……あ、待ってよ。山本ー!」
少なくとも山本は、俺のことを友達だって思ってくれてる。
綱吉はそう思い、沈んだ気持ちを浮上させ、山本の隣へと駆けていった。
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