腐った男子です。
□探険、特別棟
1ページ/10ページ
中庭をのんびり散歩しながら、僕は空を見上げます。
「今日はいい天気です……」
入学からはや1ヶ月が過ぎ、この学園にも少し慣れてきました。
その間、これといった進展や事件などはなく、穏やかな時間が流れています。
由比くんと副会長の件については、まだこれといった進展がありません。
『仲良くなる努力は諦めないぞ作戦』を実行中の由比くんは、少しでも副会長に近付く為、クラス委員になりました。
クラスの代表として会議に参加するたび、同じ会議室で副会長に会えるのでは。
そんな考えがあったからです。
それなのに副会長は、5月(つまりは今月なのですが)に行われる球技大会の準備に追われ、多忙を極めているらしく。
現在は全くと言っていいほど、接触を図れていない状況です。
由比くんは『長期戦でいくよ』と笑っていました。
「難しいです……」
ふぅとため息を吐き、中庭にあるベンチに腰掛けます。
力になりたいのに何もできません。
そんなもどかしさを感じながら、結局は由比くんが頑張らなければいけないという事も、理解しています。
「…………萌えたいです」
何の脈絡もなく、そう呟いてしまいました。
あ、すみません。
石は投げないで下さい。
仕方ないんです。
ワクワクの男子校生活が始まったのに、なかなか萌えを探せていないのです。
由比くんの件が心配なのもありますし、それ以上に、普通に暮らしていては、そう言った萌えシーンに出会えないと判明しました。
よくよく考えたら当たり前の話ですよね。
人の目があるような場所で、告白だのイチャイチャだの、するはずもありません。
中にはそういうのが平気な人もいるのでしょうが、自分に置き換えて考えてみたら、とても無理でした。
そんなわけで、未だリアルBLシーンには、出会えていないのです。
「探しに行ってみましょうか……」
校内の地理にも詳しくなって、迷子になるような心配もなくなりました。
由比くんは相変わらずの委員会活動で忙しく、陽一さんも部活(ちなみに文芸部です)で、夕食前にならないと寮へは戻りません。
1人でぼんやりしているくらいなら。
決意を固めた僕は、陽当たりのいいベンチから立ち上がり、人気のない特別棟へと歩き出しました。
.