腐った男子です。
□暗雲、球技大会
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五月晴れと言うのに相応しい、カラリと晴れた青空の下。
今日はいろんな意味で待ちに待った、球技大会が開催されています。
「あ、会長」
「えっ、どこですかっ?」
陽一さんの示す方向に、あきらかな人だかりができていました。
そこに会長がいるのでしょうけれど、親衛隊の皆さんが壁になり、会長の姿は確認できません。
うぅ、残念です……。
キャーキャー言われる俺様攻めなんて、見ているだけでも萌えなのに。
でも単なる一般生徒の僕は、あの集団を押し退けて観戦なんてできません。
いろいろ悔しい状態です。
「でもホント、凄い人気みたいだね」
BLの予備知識すらない由比くんは、大きな目を瞬かせながら、感嘆のため息を吐いていました。
グラウンド隅の木陰に陣取った僕と陽一さん、由比くんの3人は、早くもくつろぎモードで観戦中です。
僕達は3人揃ってドッジボールにエントリーしていましたが、1回戦敗退という、何とも不甲斐ない結果に終わっていました。
運動は苦手ですし、これからの時間でBLウォッチングができるなら。
それはそれで満足だと、気持ちを切り替える事にしました。
普段は接点のない上級生の皆さんを、心行くまで観察しようと思います。
「そう言えば良平、ソレの持ち主は見掛けた?」
陽一さんに指差された先には、紙袋がありました。
中身はあの日、五十嵐先輩にお借りしたTシャツです。
「いいえ。今日ならお会いできると思ったのですが……」
お会いできたら返したくて、今日はずっと持ち歩いています。
全学年参加の球技大会なので、五十嵐先輩も参加していると、疑いなく思っていました。
ですが残念ながら、五十嵐先輩の姿はお見掛けしていません。
ガッカリしていると言うか、そんな心境になってしまいます。
「あ、そう言えば」
ふいに何か思い出したらしく、由比くんが口を開きました。
「良平くん、駒沢先輩の事気に掛けてたでしょ?」
「え? はい」
五十嵐先輩繋がりで、寮長の事を思い出したのでしょうか。
寮長については、僕達のボディーガードを申し出てくれた時、気になる事がありました。
寮長を呼びに来た陸上部員さんが、『練習に出れない』と言っていた件です。
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