腐った男子です。

□事件、2035室
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夏の訪れを感じる6月初旬。
特に変哲のないこの日、ある事件が起こりました。

そもそもの事の始まりはーーー、





「陽一さん、ここの訳って、これで合ってますか?」

「どこ? あ、ここ違う」

「えっ⁉︎ あっ!」

「なぁ、戸波、これってさ」

「うん? あぁ、そこね。確か応用問題がテキストの48ページに……、あ、あった。これ」

「あ、オッケ。やってみる」

「ねぇ、良平くん。ここの人物名って、この漢字で合ってる?」

「えーと、はい。合ってますね」

カリカリと筆記具を走らせる音が響く中、僕と陽一さん、由比くんの3人は、テーブルを囲んでいました。
来週に迫る前期中間考査に向けて、もっぱら試験勉強中です。

実は僕達3人とも、成績は悪くありません。
というか、それなりに良いです。

だって外部入学組ですから。
それなりの学力がないと、そもそも入学できないわけです。

けれど面白い事に、得意科目は綺麗に別れていました。

ブログでも読みやすい文章を綴っていた陽一さんは、文系が。
頭の回転が早く、きっちりとした性格の由比くんは理数系が。

そして読んだ物語やキャラクターの記憶が得意な僕は、歴史などの社会科目が。

それぞれの得意科目を教えあえる勉強会は、とても効率的ではかどっています。

正直、歴史などは記憶ものなので、教える事もほとんどないわけですが……。

「はー、そろそろ限界。ちょっと休憩しない?」

そう言ったのは数学の応用問題を解き終わった陽一さんで、僕と由比くんの勉強も、ちょうどひと段落ついたところでした。

「そうですね。お茶でも淹れましょうか」

「あ、僕、お菓子があったんだ。部屋から持って来るね」

それぞれが動き出そうとした瞬間、僕と由比くんの携帯が同時にメールを着信しました。

「え?」

「誰かな…」

あまりのタイミングに驚いたものの、送信主を見て納得してしまいます。

「兄さん……」

差し出し人は、副会長でした。
同時に着信したのも、一斉送信だったからです。

ええと、内容はーーー。

「え?」

「えぇ?」

僕と由比くんは同時に声を上げ、お互いに顔を見合わせました。

「どうかしたのか?」

1人内容を知らない陽一さんだけが、冷静なまま僕達を見比べます。

「あの、えーと……」

「前に遊びに来るって言ってた話、今日行ってもいいか、って……」



この時はまだ、あんな事件が起こるなんて、誰も想像していなかったでしょう……。


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