短編小説
□突発小話
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「ねえ、神楽(カグラ)。関西弁で『イヤだ、ダメ』って言ってみて?」
「はぁ!?」
関西弁受け
「お前、いきなり何言い出すん?」
関西から引っ越してきて3ヶ月。
転校した先でのダチ第1号である矢内(ヤナイ)は、たまにこういう変な発言をしてオレを驚かせよる。
そもそも仲良くなったきっかけからしてアレやし、しゃーないんやろか。
「とにかく言ってみてよ」
「……えーと、『イヤや、アカン』、かな…?」
言った瞬間、ブルッと不自然に身体を揺らした矢内。
コイツなんなん。
ちょっとコワイし。
「なぁ、こんなん言わせてどうするん?」
今まで怖くて聞けんかった事やけど、ボチボチ知らんほうが怖い気がしてきた。
「んー…。神楽さ、俺が初対面で言った事覚えてる?」
「は? そら当然…」
パッと見は真面目そうに見えた矢内やけど、その雰囲気を大きく裏切り、『関西弁ってエロいね』て言ったんや。
そのギャップがおもろすぎて、仲良なったんやけど。
……ん? なんやイヤな予感が。
「やっぱエロいよね、関西弁。最近は関西弁のAVにもハマっててさ。でもやっぱ生で聞くのが1番燃えるかな」
「…オカズ用かいっ!」
裏拳付きで、ついつい本気で突っ込んでしもた。
「おお、生ツッコミ」
「アホかっ! お前はホンマのアホなんか!?」
まさかと思たのに、コイツ本気か。
友達のズリネタにされるって、どんな冗談やねん。
っちゅうか……。
「そもそもオレが言ってもオカズになんかならへんやろ!? AVあるんやったらソッチでええやん。なんでわざわざオレに言わせんねん!?」
いくら生でも男の声やし、なんも楽しないやろ。
コイツ、ホンマにどっかオカシイんとちゃうか。
オレが脱力しそうになっとると、矢内はさらにオカシな事を言うた。
「正しい反応でしょ。俺が関西弁にハマったの、神楽のせいなんだし」
……はい?
「確かに女の子の関西弁もイイんだけどさ。1番ムラッとするのは神楽の関西弁だし」
え、え?
ちょお待てや。コイツ何言うてるん?
「おかしいなとは自分でも思ってたんだけど、さっきので確信したね。俺、神楽が好きみたい」
さっきのって、『イヤや、アカン』か?
あんなんで、何を確信したって?
呆然としとる間に、矢内は身体を寄せて来た。
すぐ後ろは壁で、気付いたらもう逃げられへん状態や。
めっちゃ迫られてる。
「ねえ、神楽。俺もういっこ聞きたいセリフがあるんだけど」
「ま、まさかベタに『好きやねん』とでも言わせたいんか?」
そんなん言うわけあらへんけどな。
どんだけお願いされても、それ言うのは危険すぎるっちゅーねん。
「それも捨てがたいんだけど、違うよ」
「や、やったら…」
なんやねん。
そう聞き返す前に、耳元で答えを囁かれた。
「堪忍してってやつ。あれめちゃくちゃエロい」
ま、またエロネタかこんボケー!!!
ちゅうかリアルにそんなん言う奴おるかっちゅーねん!
絶対AV見過ぎやろ!?
そんでこの後押し倒されて、イロイロされてまう事になるんやけど、意地でも『堪忍して』とは言わんかった。
それが逆に矢内の作戦やったとか、もちろん知るわけあらへんし。
end
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