短編小説

□突発小話
2ページ/4ページ


「ねえ、神楽(カグラ)。関西弁で『イヤだ、ダメ』って言ってみて?」

「はぁ!?」


 関西弁受け



「お前、いきなり何言い出すん?」

関西から引っ越してきて3ヶ月。
転校した先でのダチ第1号である矢内(ヤナイ)は、たまにこういう変な発言をしてオレを驚かせよる。

そもそも仲良くなったきっかけからしてアレやし、しゃーないんやろか。

「とにかく言ってみてよ」

「……えーと、『イヤや、アカン』、かな…?」

言った瞬間、ブルッと不自然に身体を揺らした矢内。

コイツなんなん。
ちょっとコワイし。

「なぁ、こんなん言わせてどうするん?」

今まで怖くて聞けんかった事やけど、ボチボチ知らんほうが怖い気がしてきた。

「んー…。神楽さ、俺が初対面で言った事覚えてる?」

「は? そら当然…」

パッと見は真面目そうに見えた矢内やけど、その雰囲気を大きく裏切り、『関西弁ってエロいね』て言ったんや。
そのギャップがおもろすぎて、仲良なったんやけど。


……ん? なんやイヤな予感が。


「やっぱエロいよね、関西弁。最近は関西弁のAVにもハマっててさ。でもやっぱ生で聞くのが1番燃えるかな」




「…オカズ用かいっ!」


裏拳付きで、ついつい本気で突っ込んでしもた。

「おお、生ツッコミ」

「アホかっ! お前はホンマのアホなんか!?」

まさかと思たのに、コイツ本気か。
友達のズリネタにされるって、どんな冗談やねん。

っちゅうか……。

「そもそもオレが言ってもオカズになんかならへんやろ!? AVあるんやったらソッチでええやん。なんでわざわざオレに言わせんねん!?」

いくら生でも男の声やし、なんも楽しないやろ。
コイツ、ホンマにどっかオカシイんとちゃうか。

オレが脱力しそうになっとると、矢内はさらにオカシな事を言うた。

「正しい反応でしょ。俺が関西弁にハマったの、神楽のせいなんだし」


……はい?


「確かに女の子の関西弁もイイんだけどさ。1番ムラッとするのは神楽の関西弁だし」

え、え?
ちょお待てや。コイツ何言うてるん?

「おかしいなとは自分でも思ってたんだけど、さっきので確信したね。俺、神楽が好きみたい」

さっきのって、『イヤや、アカン』か?
あんなんで、何を確信したって?

呆然としとる間に、矢内は身体を寄せて来た。
すぐ後ろは壁で、気付いたらもう逃げられへん状態や。

めっちゃ迫られてる。

「ねえ、神楽。俺もういっこ聞きたいセリフがあるんだけど」

「ま、まさかベタに『好きやねん』とでも言わせたいんか?」

そんなん言うわけあらへんけどな。
どんだけお願いされても、それ言うのは危険すぎるっちゅーねん。

「それも捨てがたいんだけど、違うよ」

「や、やったら…」

なんやねん。

そう聞き返す前に、耳元で答えを囁かれた。

「堪忍してってやつ。あれめちゃくちゃエロい」


ま、またエロネタかこんボケー!!!

ちゅうかリアルにそんなん言う奴おるかっちゅーねん!
絶対AV見過ぎやろ!?



そんでこの後押し倒されて、イロイロされてまう事になるんやけど、意地でも『堪忍して』とは言わんかった。

それが逆に矢内の作戦やったとか、もちろん知るわけあらへんし。




 end

.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ