短編小説

□突発小話
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とある全寮制男子高校。
山奥故に同性愛がはびこり、オタクで腐男子とかいう従兄弟の話だと、いわゆる王道学園なんだという我が学び舎。

男ばっかりなのにキャーキャー言われる生徒会と、学内の風紀の乱れを取り締まる風紀委員会は、その立場の違いから、創設以来ずっと犬猿の仲だ。



 ツンヘタレ会長×クール平凡






「だから用件は何なんですか」

日替わり定食の生姜焼きを頬張りながら、目の前でモジモジしているイケメンに声を掛ける。

「いや、えっとだな、し、仕事の事で」

第28代生徒会長であるこのイケメンは、俺の至福(食事)の時間を邪魔するように、ボソボソと話していた。

「仕事の話なら直接委員長にどうぞ。ご存じだとは思いますが、俺はただのヒラ風紀です」

「だ、だからだ。一委員の意見も、さ、参考にしたいからな。現場の実状を…」

「わかりました。そういう事なら、後日複数の委員で報告書にまとめて提出します。それでいいですか?」

「ぐ…、うぅ…」

頬を赤らめながら、変な詰まり方をする会長。
大企業の御曹子でカリスマ性もバッチリな俺様イケメンなのに、俺の前だと形なしだ。

と言うのも、告られたワケじゃないけど、この人は俺の事が好きらしい。
別に敏い方じゃないけど、わかりやす過ぎて気付いたのは、もうかなり前の話。

っていうか、たぶん全校生徒が知ってる。
だっていつも食堂とか、人目のある場所で話し掛けてくるから。

会長の親衛隊いわく、2人きりだとまともに話せなくなるかもしれないから、だそうだ。
俺なんかを相手に、何でそうなるのか理解に苦しむ。

「それより会長、俺なんかにのんびり話し掛けてていいんですか」

生徒会と風紀は犬猿の仲。
それを気にしているらしい会長は、そう言うと顔をしかめて拳を握り締めていた。

「わ、かって…る。クソッ」

心底悔しそうな顔をして踵を返し、食堂から出て行こうとする会長。
去り際に、とんでもない呟きを残して行った。


「ロミジュリ状態かよ、チクショー…っ」


オイ。口の中の肉を吹き出すかと思ったじゃないか。

「…おい」

「あ、委員長。いたんですか」

会長とは違ってインテリ風美形の風紀委員長が、背後から俺を見下ろしていた。
複雑そうな顔には、あきらかに会長に対する憐憫が浮かんでいる。

「いい加減、アイツで遊ぶのはやめてやれよ…」

誰よりも敏い委員長は、そう言ってため息を吐いた。
まあ、この人にはバレてると思ってたけど。

「だって面白くって」

「…アイツもとんでもないのに惚れたもんだ」

それは俺も同じ意見。
風紀に入ってなきゃ埋没するほど地味なんだけどね、俺。

「とにかく、あんまり焦らしすぎて愛想尽かされないように、ほどほどにしとけよ」

「ご忠告どうも。でも心配ありませんよ」



提出する報告書には、彼の心を揺さぶるような一言を、忘れたりはしないから。



 end
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