短編小説

□可愛いオトコノコ
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「俺の弟と、葉月と付き合いたいなら、俺を倒してからにしろ!!!」

今日も校庭に響き渡る、お兄ちゃんの怒号。
モテモテで大変な僕を守る為、今日も決闘をするみたいです。



 可愛いオトコノコ





まるで美少女。
小さな頃からそう言われ続けた容姿のせいで、何回も誘拐されそうになっていた僕の名前は、富崎 葉月(トミサキ ハヅキ)。
お兄ちゃんを追いかけ、男子校に通う高校1年生。

そんな僕は一向に訪れない成長期のせいで、未だに美少女そのものな見た目だったりするわけで。
女子に飢えてる男子校に進学したものだから、男にモテモテの日々を送ってる。

絶えない告白やストーキングに悩まされていた僕を心配したお兄ちゃんは、自ら『害虫駆除』を申し出てくれた。
それが最早校内名物になりつつある『決闘』だったりする。

元々過保護で責任感も強かったお兄ちゃんは、僕を守る為に強くなり、今では武道の達人だ。
それを活かした作戦らしいんだけど、これが意外と大当たり。

僕と付き合うなら、どっちにしろお兄ちゃんの目があるから。
だから付き合う前に、何とか認めてもらうのが近道だと。

そんな空気になっていて、決闘の申し込みは絶える事がなかった。


とりあえず僕も見届けないとダメだよねって事で、決闘の舞台である校庭に移動する。
興味のない生徒にとっては、ただの見世物だよね。


お兄ちゃんの強さを信じている僕は、今日は誰かな〜なんて暢考えながら、とてものん気に歩いてたんだけど…。

「あれ?」

のんびり歩き過ぎたせいか、僕が校庭に着いた時、すでに決着は着いてしまった後だったらしい。
相手が弱かったのかな〜と思いつつ、地面に倒れている人物に目をやって、驚愕した。

「お、お兄ちゃん……?」

全戦全勝、無敗の帝王。
高校生最強と噂されていたお兄ちゃんが、僕以上に驚いた顔で地面に投げ出されていたのだ。

「は、葉月……」

見た事もないような、情けない顔をするお兄ちゃん。

え? ホントにお兄ちゃんが負けたの?

とても信じられなくて、今日の対戦相手を見る。
そしてお兄ちゃんが負けた理由を悟った。

「……桐上(キリジョウ)先輩…?」

そこにいたのは、柔道部の2年生エース、桐上先輩だった。

噂では五輪の強化選手にも選ばれていて、ストイックさが顔にまで表れているような人。
彼が相手なら、いくらお兄ちゃんが強くても、勝てなくて当たり前なのかもしれない。

でも意外過ぎる対戦相手だ。
僕を好きだなんて噂は聞かないし、素振りもなかった。

交際を掛けて兄と決闘なんて、絶対にあり得ないと思える人なんだけど。


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