短編小説
□可愛いオトコノコ
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でもなんか脱力。
お兄ちゃんが負けたって事でいらぬ心配もしたのに、僕がオマケだったって展開なんだよね。
スッキリはしないけど、もういいや。
桐上先輩が僕を好きじゃないなら、このお話はこれでおしまい。
「わかりました。じゃあそういう事で」
「待って!」
脱力しなが教室を出ようとした僕を、先輩は少し慌てた様子で呼び止めた。
「何ですか?」
「交際はどうなるんだ?」
「は? そんなの無効でしょ。桐上先輩、僕を好きじゃないんだから」
当たり前の事を言ったのに、顔をしかめられてしまった。
何でそんな反応するんですか。
「決闘を申し込んだ以上、勝てたら交際すると決めていた。君のお兄さんにも頼まれたし、これからは俺が君を守りたいんだけど」
まっすぐストレートに。
こっちが照れるようなセリフが耳を襲った。
「は!? な、何言ってんですか! そんな変な責任感とかいらないんですけど!」
不意打ちだったせいか、頬が一気に熱くなる。
いや、でも守りたいとか。
今までにも言われた事あるけど、こんなに恥ずかしいと思った事なんてあったっけ?
「葉月は俺と付き合うの、そんなにイヤか?」
「え、い、イヤってわけじゃ…」
「なら付き合おう」
「う、うん……?」
……あれれ?
なんか変な展開になってる。
…でもまあ、いいのかな?
だってさっきまで感じてたモヤモヤが、どっかに行っちゃてる。
それにお兄ちゃんより強い桐上先輩なら、ホントに僕を守ってくれそうだから。
「じゃあこれからよろしくな、葉月」
「はい…。よろしくお願いします」
この後、僕は本気で桐上先輩を好きになるんだけど。
そんなの、予想だにしていなかった。
end
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