腐った男子です。
□質問、管理人室
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「よかったら食べて」
「わわ、ありがとうございます」
寮長が煎れてくれた緑茶を飲みながら、差し出された和菓子に目を輝かせました。
この和菓子は街に降りなければ入手できないお店の物で、見た目の美しさと控え目な甘さが本当に上品な―――、
「早速ですけど、本題に入ってもらえますか?」
……そうでした。
大好物のお菓子を前にして、1番大切な用件を失念してしまうところでした。
日付が変わって、さらに正午を待ち、僕と陽一さん、そして由比くんの3人は、昨日の約束通り、寮長の元を尋ねています。
ちなみに場所は寮管室で、応接セットに案内され、お茶を振る舞って頂きました。
「もちろんそのつもりだよ。……君達3人は外部生だけど、この学院について、どんな知識と噂を知ってる?」
聞かれてすぐ、僕と陽一さんは顔を見合わせました。
同性愛者が多いと聞いています、なんて言ってしまうと、あらぬ誤解をされてしまいそうです。
「学力、スポーツ、芸術のどれもが有名で、良家の子息だけではなく、一般家庭の生徒に対しても広く門戸を開いている。支援態勢も充実していて、生徒の自主性を重んじる教育方針が魅力」
流れるように寮長が言った説明は、いわゆる対外的なものでした。
面接で学院の特色を聞かれた際、こう答えなさいというお手本です。
「だけどそれだけじゃない。この学院の噂を耳にした事くらい、もちろんあるよな?」
聞かれた問いに、僕と陽一さんは頷きました。
けれど由比くんは、小さく横へと首を振ります。
「すみません……。僕の地元は県外で、あまり詳しくは知らないです。この学院を志望した動機も個人的な事で、周りを見る余裕もありませんでした」
由比くんは、お兄さんと同じ学校に通いたい一心だったのですね。
そんな場合でもないのに健気な顔を見せられて、思わず萌えてしまいそうになりました。
「中谷と市川はどんな噂を聞いた?」
「……同性愛者が多いってやつなら、噂程度で聞きかじりました。生徒会の方々は凄い人気みたいですが、実際にそういった場面を見たわけじゃないんで、確信はありませんが」
陽一さんの言葉に僕も頷き、苦い顔をしたままの寮長を見ました。
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