腐った男子です。

□質問、管理人室
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あまりの衝撃に動揺しつつも、寮長は学院内の危険区域について、丁寧な説明をして下さいました。

僕と由比くんはもちろん、もしもの連絡用に、陽一さんも寮長と携帯番号を交換します。


大体の説明が終わったところで、寮長が僕達に『何か質問は?』と聞いて下さいました。

昨日からずっと気になっていた事を、訊ねるチャンスです。

「あの、昨日僕を助けて下さった方は……」

五十嵐 冬弥先輩。
名前と、寮長の元ルームメイトだという事以外、何も知りません。

深入りしないほうがいいと言われても、納得できませんでした。

だって僕は、本当に感謝しているんです。
もう1度会って、どうしてもお礼が言いたいです。

たったそれだけでも、ダメなのでしょうか?


真剣な眼差しで寮長を見つめていると、僕が引きそうにもないと思ったのか、渋々話し始めてくれました。

「昨日も言ったように、冬弥は俺の元ルームメイトだった。無愛想で近寄り難いけど、根は悪い奴じゃないと思ってる。けど……」

「けど……?」

「あいつは去年、大きな問題を起こした。新聞沙汰にならなかったのが不思議なくらいの暴力事件で、何とか退学は免れたけど、留年を余儀なくされたんだ」

暴力事件、ですか……?

「当時の3年生、つまり上級生を4人病院送りにして、五十嵐自身も入院したって聞いてる。
元から人を寄せ付けない奴ではあったけど、事件以降はさらに酷くなってた。……ルームメイトだった俺とも、口をきかなくなるくらいに」

五十嵐先輩は確かに不良さんな容貌をしていましたが、そんなに大きな問題を起こすような人には、とても見えませんでした。

だって立てない僕を、おぶってまでして、寮に送ってくれたんですよ?

「一体何が原因で、そんな……」

陽一さんも気になったらしく、眉を寄せています。

「原因は未だに不明なんだ。五十嵐は上級生を殴った原因を、絶対に話そうとしなかったから」

管理人室の中に、重い空気が立ち込めました。
寮長は厳めしい顔をして、僕を見つめています。

言いたい事は、わかっています。

危険な場所に、人に、近付くべきじゃないと。
そう言いたいのでしょう。


でも僕は―――、

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