腐った男子です。

□質問、管理人室
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「駒沢先輩、いますかー?」

いきなりの呼び掛けに、ビクリと身体を跳ねさせてしまいました。

驚いて声のした方向、寮管室の入口を見れば、陸上部と思われるユニフォーム姿の生徒がいます。

「竹下?」

寮長は応接セットから離れ、入口に歩み寄ります。

「もうすぐミーティングの時間ですよ」

「あぁ、そうか。悪い、呼びに来てくれたんだな」

「いいえ。部長の心配性が出ただけですよ。練習に出れなくても、もうちょっと顔出して下さいよ」

朗らかに笑いながらの会話に、疑問を抱きました。

練習に出れないって、どういう事でしょう?

「わかったよ。すぐに行くから、先に行っててくれ」

「あ、来客中だったんですか? すみません」

応接セットは入口から死角になっていたらしく、今僕達に気付いたようです。
お互いに会釈した後、陸上部員さんは足早にその場を後にしました。

僕達もお暇したほうがよさそうですね。
応接セットのソファから立ち上がり、寮長に挨拶しようと思います。

「あの、じゃあ僕達はそろそろ……」

「あぁ、悪いな」

「いえ。お菓子、ご馳走様でした」

ペコリと頭を下げれば、下げた頭をフワリと撫でられました。

「寮長……?」

「ホントに気軽に呼んでくれていいから、絶対に危ない事はしないようにな」

ああ、お兄ちゃんってこんな感じなのでしょうか。
優しい眼差しでそう言われたら、心がホワホワしてしまいます。

「はい。ありがとうございます」


お辞儀をして寮管室を出た僕達は、事前に決めていたので、食堂へと歩き始めました。
少し遅くはなりましたが、これから昼食タイムです。

「……あ!」

「ん? どうした?」

いきなり立ち止まって声を上げた僕を、陽一さんと由比くんが振り返ります。

ああ、どうしましょう。

「お財布を忘れてしまいました」

部屋の鍵と携帯電話は持っているのに、うっかりです。

「僕、急いで取りに行ってきます」

「一緒に行こうか?」

「いえ、大丈夫です」

「でも……」

由比くんの顔が曇ります。
寮長のお話を聞いたばかりですから、僕を1人で行動させるのが心配なんでしょう。

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