腐った男子です。

□暗雲、球技大会
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「何かわかったのですか?」

「うん。えー、と。先輩…に、聞いて」

凄く言い辛そうです。
由比くんがこういう物言いをする時は、大抵が由比くんの親衛隊に絡んだ場合です。

たぶん『先輩』と言うのは、親衛隊の方なのでしょう。
未だ親衛隊持ちという立場に慣れない由比くんに、こっそり萌えです。

「えっと、駒沢先輩だけどね。3月に結構な怪我をしたらしいんだ」

「えっ?」

穏やかではない内容に、目を見張ってしまいます。

「競技中に、らしいんだけど。最近までリハビリに通ってて、大変だったみたい」

「そりゃ大変だろうな。寮長って確かスポーツ推薦の特待生じゃなかったっけ」

陽一さんが付け足した情報のおかげで、事はより重大さを増します。

スポーツ特待生でありながら、部活ができない状況。
リハビリにも通わなければならず、肉体的にも精神的にも辛かったはずです。

その上、寮長という立場もあって。
全てを完璧に熟す事なんて、無理に決まっています。

「なら余計に、仕方なかったですよね」

寮長は何度も僕に謝ってくれましたが、自分が大変な時だったのなら、他が疎かになっても納得です。

責任感が強そうな寮長が、その役割を果たしきれなかった理由。
仕方ないとしか、言いようがありません。

それなのにあんなに恐縮されて、その上ボディーガードを頼んでしまうなんて。
僕の方が申し訳なくなります。

「あ、噂をすれば」

「え? あ……っ」

陽一さんの視線の先に目をやると、グラウンド隅にいる僕達の方へ近付いてくる、寮長の姿が見えました。

「寮長、お疲れ様です」

「あぁ、お疲れ。こんな場所で観戦か?」

にこやかに微笑む寮長は、学校指定のお洒落ジャージに負けない、爽やかスポーツマン全開です。

「俺達は初戦敗退ですよ。後はもうのんびりするだけです」

「あはは、それは残念だったな」

「駒沢先輩はどうなんですか?」

「俺か? 俺は競技にはエントリーしてないよ」

「えっ?」

もしかして、怪我の具合が思わしくないのでしょうか?

さっき聞いたばかりの話が頭を過ぎり、つい不安げに寮長を見上げました。
そんな僕に気付いたのか、寮長は僕の頭をポンポンと撫でて、笑顔を見せてくれます。

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