腐った男子です。

□暗雲、球技大会
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「体育祭は別だけど、基本的にこういうスポーツ行事には出れないんだ。不公平になるから、スポーツ特待生は審判をやってるんだよ」

なるほど、納得です。

体育祭の時には、クラス関係なしに組分けされると聞きました。
クラス対抗の球技大会では、偏りが出てしまう為、そんな制度が設けられているのですね。

1人で感心していると、寮長が少しだけ表情を変え、呟くように言いました。

「………ありがとう」

「え?」

何に対するお礼を言われたのか、わからなくて驚いてしまいます。

「俺はもう行くけど、これ差し入れ。5月とはいえ日差しが強いから、熱中症には気を付けろよ」

そう言って渡されたのは、スポーツドリンクのペットボトルでした。
よく冷えたそれは3本、丁度僕達の人数分です。


……わざわざ買って来て下さったのでしょうか?


「………コレってさぁ」

来た時同様、爽やかに去って行く後ろ姿を見ながら、陽一さんが不思議な事を言いました。

「俺達のはオマケかもな」

「へ?」

「……言いたい事は、わかる気がする」

え、由比くんまで何なのですか?

「寮長って元々面倒見はいいんだろうけどさ。良平に対しては、心配性なお兄ちゃんって感じになってる」

「ええぇ!? そうですか!?」

「傍目から見てると微笑ましい。BLっぽくないのが残念」

………僕と寮長はBLしてないので、仕方ないと思います……。

何かと僕を巻き込みたがる陽一さんに、あえて反論はしませんでした。
入学してからずっとの事なので、慣れてきたという感じでしょうか。

期待に添う事はできません、と心中では思いつつ、何気なく校舎の方に目をやりました。

「あっ…!」

「良平?」

いきなり表情を変えた僕を、陽一さんと由比くんが訝しむのがわかります。

「すみません、僕ちょっと……」

けれど僕は、最後まで言い切れないまま、慌てて立ち上がりました。
すぐ傍に置いていた紙袋を手に取り、お2人の声にも耳を貸さず、走り出します。

もしかしたら見間違いかもしれません。
でもさっき、特別棟へ繋がる渡り廊下に、ずっと探していた人物の姿があったのです。

「五十嵐先輩……っ」

僕はほとんど無意識のまま、全力疾走をしていました。

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