腐った男子です。

□暗雲、球技大会
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「何? セフレじゃ嫌だとか言うタイプ? 悪いけど恋人はいらないから、それは無理だぞ?」

「いえ、そうではなくてっ」

そもそもの問題と言うか。

「僕はあの、ノーマルなので……」

「はぁ!?」

大きな声で驚かれ、僕もビックリしてしまいました。

あぁ、でも何故こんな展開になってしまったんでしょう。
ただでさえ会長には親衛隊があって、近付く事すら恐れ多いのに。



………親衛、隊?


ああぁぁぁ!
すっかり失念していました!

今の状況を見られでもしたら、僕、とっても危なくないですか!?
その上セフレに誘われただなんて、危険すぎます!

「ですから、あの、会長と恋人になりたいとか、そういうのではないんですっ! す、すみませんでしたっ!」

勢いよく頭を下げて、クルリと反転します。
そのまま会長の反応も確かめずに、脱兎のごとく走りだしました。

はい。逃亡です。

きちんとした挨拶もせず逃げ出すのは、かなり失礼だとわかっています。
でもそれを気に掛ける余裕も、僕にはありません。

会長の言った『恋人はいらない』の意味だとか、思いっきり僕に断られた会長の気持ちだとか。

とにかく必死で走っていた僕は、深く考える事もありませんでした。



とにかく走って走って、体力が限界を迎えた頃。
ジャージのポケットに忍ばせてあった携帯電話の振動に気付きました。

あ、そう言えば。
陽一さん達を振り切って、単独行動を取ってしまいました。

きっと心配したお2人からだと思い、相手が誰かも確かめずに通話ボタンを押します。

「もしもし」

『良平?』

聞こえてきた声は、予想通りの陽一さんです。

『いきなり走り出すから驚いただろ。今どこ? 危ない目に遭ってないか?』

陽一さんは駒沢寮長を心配性だと言いましたが、陽一さんも充分心配性ですね。

さっきまでの動揺も忘れて、思わず微笑んでしまいました。

「大丈夫ですよ。すみません、ご心配をお掛けしました。今はえっと、管理棟の近くです」

場所もわからず走っていたので、自分の現在地を確認しながら答えます。
そんな僕の視界に、見知った人の姿が映りました。

「……駒沢寮長?」

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