腐った男子です。

□暗雲、球技大会
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『寮長が近くにいるのか?』

「はい。あ、目が合いました」

僕の姿を確認したと同時に、寮長は真っ直ぐ僕に向かって走り出します。
どうやら寮長にも、ご心配をお掛けしてしまったようです。

「市川に連絡もらって探してたんだ。…その電話は市川か?」

駆け寄ってきた寮長は、少し息を切らしながら、僕に異変がないか確認しているようでした。

あぁ、本当に申し訳ないです。

寮長と一緒に戻る事を陽一さんに約束して通話を切った後、僕と寮長の間には何とも言えない沈黙が漂います。

結果的には何もありませんでしたが、生徒会長に止められなければ、どうなっていたかはわかりません。
気を付けるという約束を破ってしまっただけに、気まずさが募ります。

思わず俯いてしまった僕の視界に、握り閉めた寮長の拳が映りました。

「あの……?」

どんな顔をしているのか、気になって寮長を見ようとした時です。

「……っ!?」

え? ええぇ!?

「心配した……」

言葉通り、かなり心配して下さったのでしょう。
その声は安堵の色を含み、ほんの少しだけ震えているようにも聞こえました。


…………僕の、耳元で。


と言うか、えええぇぇ!?
これって抱き締められてます!?

一体何故こんな展開に。
今日そう思ったのは、これで2回目です。

これが他人事なら生BLだとはしゃげたのでしょうが、自分の身に起こっていては、萌える余裕もありません。

「あ、あの…っ」

「あぁ、悪い…」

やんわり押し返せばすんなりと身体を放されましが、僕の困惑は続いていました。

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