腐った男子です。

□見学、親衛隊
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共同スペースであるリビングは、この学園がいかに大きな学校とはいえ、そこそこの広さしかありません。
高校生の男子6人が集まれば、さすがに手狭です。

当事者である僕と寮長が隣に座り、その向かいには会長と副会長が。
由比くんはキッチンスペースでコーヒーの準備をして下さり、陽一さんは窓辺で傍観という位置関係に収まりました。

「じゃあ早速だけど、状況を教えてもらえるかな」

ソファにもたれて聞く体制の会長とは対象的に、副会長は何やら書類を片手に質問を始めます。
動揺してしまった僕は詳細な事までは覚えておらず、寮長が答える状況に驚く事もありました。

「それじゃあ話をまとめるよ。場所は管理棟からグラウンドへ向かう途中。窓が割れた原因は投げられた石で、ガラス片が外側に多かった事から、外から投げこまれたとは考えにくい。
投げた犯人についての目撃情報はなし。時間的に試合が終わっている者も多かった為、犯人を絞り出す条件を特定するのは困難、か」

まるで本物の警察官のように、スラスラと状況を読み上げる副会長。
いつにも増して聡明に見えます。

「石は中から投げられたんだろう? それじゃ管理棟に入れる奴に絞れるんじゃないのか」

会長が示した可能性に、副会長は頭を振ります。

「この時間は丁度、管理棟のロックは外されていたそうだ。何でも球技大会でテンションの上がっていた教師数名が、外部の仕出し業者に弁当を注文していたらしい。その為、一時的に誰でも出入り可能性な状態だった」

「マジかよ…。馬鹿教師共が」

「そう言うな。こんな時でもないと、教職員は気分転換の機会がないんだから」

この学園は生徒同様、教職員も敷地内での住み込みを義務付けられているそうです。
仕事を抱えている分、生徒よりも時間の自由がないのでしょうね。

「窓ガラスが割れた位置と2人のいた位置からいって、偶然だったとは考えにくい。2人のうちどちらかを狙ったものだと思われるのだけど、心当たりはある?」

「特にはないな。まあ人の恨みなんて、どこで買ってるかわからないけど」

即答した駒沢寮長とは対象的に、僕はすぐに答える事ができません。

「中谷?」

「良平くんは、心当たりがあるの?」

「えーっと……、その……」

訝しむ副会長と寮長を前に、モゴモゴと口ごもってしまいます。
だって寮長はともかく、副会長が原因かもなんて、本人に言えるわけがありません。

一向に口を開けないでいたら、思わぬ人物がある可能性を口にしました。

「もしかしたら、俺のせいかもな」

僅かばかり気まずい顔をした、生徒会長です。


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