腐った男子です。
□見学、親衛隊
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学園での生活が長い分、畑田くんは色々な噂やその真相を知っていました。
僕達が知らない先輩カップルの話や親衛隊持ちさんの話は萌える要素が満載で、気付けばあっという間に時間が過ぎていきます。
「そう言えば陽一さん、時間は大丈夫なのですか?」
「あー、そろそろヤバイかな。畑田が普段言わない情報ばっか話すから、つい忘れそうになった」
わかります。
腐男子ならば気になる話題ばかりでしたよね。
「まあマル秘情報は今度また聞くとして、俺はそろそろ……」
陽一さんが席を立ち掛けた、その時でした。
「ちょっと!」
自分達4人ではない人の声。
何事かと視線をやれば、見覚えのない生徒が3人、僕達の席の横に立っていました。
「中谷 良平。ちょっと話があるんだけど」
そう言ったのは中央に立っている人で、驚くほど可愛らしい顔立ちをした生徒でした。
襟章を見る限り、3年生のようです。
嫌な予感がした直後、『うわ、会長親衛隊…』という畑田くんの呟きが聞こえ、予感は確信へ変わりました。
これはつまり、親衛隊によるお呼び出しーーですよね?
冷や汗ダラダラです。
親衛隊に目を付けられるつもりは全くないのに、心当たりはバッチリあるという状態なのですから。
BL本による先入観や親衛隊の方達の雰囲気から、楽しいお話ではない事も予想がつきます。
「ちょっと、聞いてるの!? 話があるって言ってるでしょ!」
すっかり怯んでしまい返事もできない僕に、中央にいる先輩は苛立ちもあらわです。
慌てて頷くものの、どうしたらいいのでしょうか。
「話ってここじゃできないんですか? 今、コイツ1人にできない状態なんですけど」
よ、陽一さぁぁぁぁん!
ありがとうございますぅぅぅ!
心の中で盛大にお礼を言っていると、親衛隊の方々は予想外の返答をしました。
「あぁ、それは構わない。僕達も要らぬ疑いは掛けられたくないからね。でもそうそう聞かせたい内容でもないから、隣のテーブルに移動してもらうよ」
あ、あれ……?
意外な展開です。
もっと殺伐としたお呼び出しを想像してしまっていた僕は、幾分落ち着いた心地でテーブルを移動しました。
向かいには親衛隊の方々が並んで座り、コホンと咳払いをした後、中央の先輩が自己紹介を始めます。
「僕は生徒会長親衛隊隊長、川原 桃麻(カワハラ トウマ)、3年。こっちは副隊長で2年の入江 緑(イリエ ミドリ)、反対にいるのが白石 泰羽(シライシ ヤスハ)」
う、どうしましょう。
一気に名前を言われても、覚えられる気がしません。