腐った男子です。
□再会、社会科室
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ピピピピピッ
「あ…っ!」
もはや陽一さんに何と返していいかわからずに困惑していた僕の携帯が、救いの手を差し伸べるかのように電子音を響かせました。
とりあえず助かりました…!
慌てて画面を開くと、そこには寮長からのメール着信が。
部活が終わったので、今から帰るとの連絡メールです。
「誰?」
「寮長です」
寮長に頼みたい事があったので、部活が終わってから部屋を訪ねる約束をしていていました。
各部の部室がある棟から寮までの時間は約10分。
少し早いかもしれませんが、ニヤニヤと笑っている陽一さんにはイヤな予感しか感じないので、すぐに部屋を出ようと思います。
「中谷!」
「お疲れ様です」
寮長の部屋の前(ちなみに寮管室ではなく、その隣にある個人部屋です)で、駆け寄ってくる寮長に向かって頭を下げました。
「悪い、待たせたか?」
「い……、いえ! 大丈夫ですよ」
本当は少し待ちました。
でも早く来たのは僕の勝手で、そんなに申し訳なさそうな顔をしないでほしいのです。
そしてつい『今来たところです』と言ってしまいそうになって、踏み留まりました。
だってそれって、何だかデートの待ち合わせの台詞みたいじゃないですか?
………BL脳な自分が気にしすぎなのかもしれませんが。
「とりあえず中に入って」
「はい」
促されて足を踏み入れた寮長室は、通常の寮部屋とは違い1人部屋です。
造りも全然違っていて、共同スペースがない分、少し広めの1DKになっていました。
きちんと整理された室内は、さすが寮長といった感じです。
「お茶しかないけど、いいかな?」
「あ、お構いなく! よかったら僕がお煎れします!」
部活終わりで疲れているだろう寮長に、お茶汲みなんてさせられません!
「そうか? あー、じゃあそれ頼んで、すぐ戻るからシャワー浴びてきてもいいかな? もう汗だくで」
「えっ!?」
シャワー、ですか?
「ん?」
「あ、いえ、何でもありません! ど、どうぞ!」
一瞬あらぬ妄想をしてしまい、頬が熱くなってしまいました。
深い意味なんてあるわけないのに、本当にどうしようもないBL脳ですね。
着替えを手に浴室へ向かった寮長を見送り、キッチンスペースへ向かいます。
ヤカンを火に掛け、急須に緑茶の茶葉を入れ、沸騰したお湯を注ぎました。
そしてふと気付きます。
部活後で、しかもシャワーを浴びた後となるとですね。
もしかしなくても、温かいお茶だと暑いのでは……?
あー、でもお茶って言ったのは寮長で、でもでも。
あるかなと思い冷凍庫の扉を開けると、製氷器には氷が出来上がっている状態でした。
寮長に聞いて、冷いお茶がいいなら氷を入れて頂きましょう。
ひとまず安心です。