腐った男子です。
□再会、社会科室
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「………」
寮長は眉間のシワもそのままに、無言で考え込んでしまいました。
僕の勝手な思いで護衛を頼むなんて、やはり図々しかったでしょうか。
けれどここで『やっぱりいいです』とも言えません。
ずっと引っ掛かったままのモヤモヤはとても厄介で、寮長に付き添って頂けなかったら、1人で特別棟へ行ってしまいそうなのです。
また何かに巻き込まれ、心配を掛けさせたくありません。
それ以上に心細く、怖いという思いもぬぐい切れないのです。
気まずい沈黙がしばらく続いた後、いつの間にか眉間のシワを消していた寮長が、決意のこもった眼差しで僕を見つめていました。
「わかった。付き合うよ」
「……っ!」
「ただし、特別棟に入ったら俺の傍から離れない事。何かあったら全力で逃げる事。これだけは約束してくれ」
「はい!」
これで五十嵐先輩を探せます!
嬉しくて笑顔になる僕に、寮長はため息を吐きました。
「まあ、俺を頼ったのは正解かな。冬弥の居そうな場所も知ってるし」
「えっ!?」
「元ルームメイトだって言っただろ? たぶん在校生の中で、あいつの事を1番知ってるのは俺だよ」
そ、それは心強いです…!
五十嵐先輩を探すにしても、心当たりがあるなら闇雲に探し回る必要はないですよね。
危険な目に遭う確率も、グンと下がるはずです!
「どうぞよろしくお願いします…っ!」
感極まって頭を下げた僕に、駒沢寮長は苦笑を浮かべていました。
「けっこう頑固なんだな…」
「え?」
頑固って、僕がですか…?
「いや……。明日、部活はミーティングだけだから、それが終わってからでもいいか?」
「はい!」
異論など、もちろんありません。
むしろ明日早速行けるなんて、とても早い展開ですよね。
寮長が一緒に行って下さるなら、怖さもどこへやら。
そんな場合でもないのに、探検の続きができるような気分です。
自然と笑顔になっていた僕を見て、寮長も優しげな笑みを浮かべていました。
その後、『茶菓子があったんだ』と豆大福を出して下さった寮長と、和やかな時間を過ごしました。
ずっと抱えていたモヤモヤの脱出口を見出したからか、寮長の柔らかな気遣いのおかげか。
元々大好きだった和菓子はよりいっそう美味しく感じられ、とても嬉しい気持ちでいっぱいになりました。