腐った男子です。

□再会、社会科室
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「そうだな。たぶん見回りでもしてるんだろう」

「見回り、ですか?」

不良の方々が縄張り化している特別棟で?

「今この学園には風紀委員がないって、この間聞いただろ? 野放しにして無法地帯にならないように、あいつはここの見回りをしてるんだ」

それを聞いてようやく、漫画的なタイミングで助けられた謎が解けました。
その見回りのおかげで、僕は助けて頂けたのでしょう。

でもー……。

「五十嵐先輩は、元々風紀委員だったのですか?」

あの見た目で風紀とは考えにくいものの、漫画や小説ではあり得る設定です。
五十嵐先輩が元風紀委員だったとして、委員が解体された後も学園の風紀に気を配るほど責任感がある。

そう仮定すれば、すんなり納得できる話です。
けれどそれはすぐさま寮長に否定されてしまいました。

「いや、そうじゃない。冬弥は自分の意思でやってるんだ。理由に心当たりはあるけど、確証があるわけじゃないから……」

歯切れの悪い口調。
五十嵐先輩が起こしたという問題と、関係があるのでしょうか。

これ以上は聞けない雰囲気に口ごもり、気まずい空気になりかけた時でした。

ガラッ

「…っ!」

社会科室の扉が開き、そこにはーーーーー、

「……こんな所で、何をしている」

いい顔はされないだろうと思ってはいましたが、想像以上に険しい表情をした、五十嵐先輩が。

「ご挨拶だな。お前がなかなか姿を見せないから、ここに来たんだよ」

「それだけの為にここに来たのか?」

「ちゃんとした用はあるさ」

「ふざけんな。お前が俺にどんな用があるってんだ」

「あ、あの…!」

何故か一種触発の空気で会話するお2人の雰囲気に耐えきれず、思わず声を上げてしまいました。

うぅ、そんなに睨まないで下さい…!

「あの、用があったのは僕なんです…! どうしても、これをお返ししたくて…。あとあの、お礼を、」

「お前、あの時の奴か…。返さなくていいって言っただろ」

寮長に対するわかりやすい怒気ではなく、冷静にも思える声色。
けれどそれが余計に、五十嵐先輩の怒りを感じさせるには充分で、二の句が告げなくなります。

今回は1人でここへ来たわけでもないのに、何故こんなに怒られているのでしょう。
お礼をしたいという僕の気持ちは、迷惑以外の何物でもないのでしょうか?


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