腐った男子です。

□再会、社会科室
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案の定、五十嵐先輩はポカンとした顔で僕を見ています。

ああぁ、何て事を口走ってしまってのでしょう!
これではまるでナンパです!

「あ、ああああの深い意味はなくてですね、そのあのえっと!」

どうフォローすればいいのかわからず、オロオロして更に失言を追加しそうな勢いです。

「さ、さっきのは聞かなかった事に…っ、」

「いいぜ」

して下さいと言いきる前に、そう言われました。

「え……?」

な、何がいいのでしょうか…?

「メアドくらい、教えてやる」

五十嵐先輩はそう言って、おもむろにスマホを出しています。

え…?
ほ、本当にいいん、ですか……?

「その代わり条件がある」

「は、はいっ」

「護衛は元基に頼むな。どうしても必要なら、オレを呼べ」

それで、なのですか…?
責任感の強い寮長が、僕の為に危険を侵さない為?

その為に、僕にメアドを教えてくれるのですか…?

「……わかり、ました」

きっと僕は、五十嵐先輩に護衛を頼んだりはしません。
寮長にも、もう頼む事はないでしょう。

なら五十嵐先輩のメアドは必要ないわけで。
でもどうしてなのか、聞かないでおくという選択をできませんでした。

それがどうしてなのか?
……正直、僕にもわからないのです。



お互いのメアドを登録し終えた頃、隣の準備室から寮長が戻って来ました。
五十嵐先輩は一言二言、寮長に対して注意のような小言を言っていました。

その内容も頭には入らず、促されるまま特別棟を後にし、寮へ向かう道すがら、ようやく我に返ります。

「り、寮長!」

「どうした?」

自分がリスクを背負っていた事など微塵も感じさせない笑顔で、振り返る寮長。

どうして自分も危ないのだと、教えてくれなかったのですか。

そう問い掛けそうになって、寸前で言葉を飲み込みました。

寮長を責めたいわけではないのです。
そんなのは責任転嫁で、1番悪いのは自分だとわかっているのですから。

きっと寮長は、謝るよりも……、


「あの、今日は本当にありがとうございました」

感謝の言葉を伝えると、予想通り。
寮長は優しい笑みで応えてくれました。

あぁ、もう本当に。
どうしてそんなに優しいのですか。


罪悪感でいっぱいになった僕は、これからどれだけ好奇心を刺激される出来事が起こっても、決してフラフラしないと心に誓ったのです。





再会、社会科室 end

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