腐った男子です。
□再会、社会科室
8ページ/10ページ
「そう怖い顔で凄むなよ。ちょっとは話を……、」
寮長が取りつく島もない五十嵐先輩を言い含めようとした矢先、とてもほがらかな電子音が教室内に鳴り響きました。
………さ、サザ○さん……?
「……すまない」
ひとつ咳払いをして、寮長が携帯電話を取り出しました。
ま、まだ寮長で良かったと思うべきなのかもしれません…。
これが五十嵐先輩の着メロだったら、いろんな意味で怖すぎます。
「待て、元基」
画面を確認して、廊下に出ようとした寮長を、五十嵐先輩が呼び止めました。
「準備室使え。廊下よりマシだ」
僕はポカンとしてしまいましたが、寮長は五十嵐先輩の意図を読み取ったらしく、軽く礼をして教室内から直接行ける準備室へと入って行きました。
……廊下よりマシって、何なのでしょうか?
「この棟は危ないって言っただろ。廊下じゃ誰とはち合わせるかわかったもんじゃねえ」
頭上に?マークでも飛んでいたのか、五十嵐先輩はそう説明してくれました。
けれど真意までは理解できません。
ひ弱な僕が危ないのはわかるのですが、体育会系でがっしりした体躯の寮長でも危ないのでしょうか…?
「あのな」
斜に構えていた五十嵐先輩が僕の対面に向き合い、真っ直ぐに視線を合わされます。
こ、これは怒られる予感がします。
さっきみたいに怒鳴られるかもと思えば、恐ろしくもあるのですが。
そんな場面ではないのもわかっているのですが!
め、めちゃくちゃイケメンなのが気になるのです……!!!
ああぁ、もうほんと残念な脳ですみませんんん…!
でも免疫がないのです!
こんなイケメンさんに真っ直ぐ見つめられる免疫が、全然ないのでテンパってしまうのです!
脳内は完全なるパニック状態でしたが、顔には出ていなかったらしく、五十嵐先輩は淡々と説明を始めて下さいました。
「護衛のつもりでアイツを連れて来たのかもしれねえけどな。いくらアイツがガタイよくても、お前みたいなカモ連れてたんじゃ危ない事に変わりねえんだよ」
「え…?」
「ここの奴らに出くわしても、元基だけなら何とでもなるさ。走って逃げりゃあいい。でもお前を守りながら、何とかすんのは無理だ。運動神経とケンカは別だし、そもそも部長やってるアイツがケンカなんて不祥事起こせるはずもねえ」
「あ……」
「お前がいるからバッくれんのは無理。ケンカして大会出場停止になるわけにもいかねえから、サンドバックになって怪我すんのがオチだ。最悪、お前はラチられてマワされる」