腐った男子です。
□再会、社会科室
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愕然としました。
僕はまた、何て浅はかな行動を取ってしまったのでしょう。
寮長が一緒ならば大丈夫だと。
優しい寮長の好意に甘えて自分のワガママだけを押し通し、その結果、寮長がどんなリスクを背負うかなんて、ちっとも考えていなかったのです。
……恥ずかしい。
そしてとても、申し訳ないです。
「………」
とても顔を上げられず、さっきまでのテンションが嘘みたいに沈んでいきます。
五十嵐先輩には醜態ばかり晒していて、合わせるか顔がありません。
「…元基はここの事を知ってたから、今回は大丈夫だったがな。毎回こんなに上手くいく訳じゃない。それをちゃんと覚えてろよ」
「はい……」
気まずい沈黙の中、僅かに隣室の話し声が聞こえてきます。
寮長の電話はなかなか終わらず、まだ戻ってくる気配がありません。
「……お前」
「え?」
「お前、元基と付き合ってんのか?」
……………は、はいいいいぃ⁉︎
「何だ、違うのか?」
「ち、違います!」
いいいいいいきなり何を言い出すんですか!
寮長が僕と付き合っているなんて、そそそそそそんな訳ががが!
寮長はお兄ちゃんです!
心のお兄ちゃんなのです!
「じゃあ何でここ来んのに付き合ってんだ?」
「そ、それは…っ」
しどろもどろになりつつも、五十嵐先輩に助けてもらった時の出来事を、寮長が自分の責任だと悔やんでいた事。
それ故、ボディーガードを申し出て下さっていた事をお話ししました。
「ああ、アイツらしいな」
そう言った五十嵐先輩は呆れ顔で、名前呼びの事といい、寮長と仲が良かったんだろうと思わせるには充分でした。
……ここで五十嵐先輩と寮長で腐妄想とか、ダ、ダメですよ……ね?
攻×攻で元同室とか、ちょっとイイな、とか思って、思ってません。
ついさっきあれだけ落ち込んだのに、我ながら、頭の切り替えが早すぎます。
こんな思考回路だから、色々としでかしてしまうのでしょうか。
「とりあえずそれは受け取るから、もうここには来んなよ」
差し出された手に、長い間持ち歩き続けた紙袋を渡します。
途中で何度もくたびれて、その度新しい袋に変えていたので、ヨレてはいません。
もうこの紙袋を持って、先輩を探す事もない。
そう思った瞬間、何だがとても寂しい気持ちになります。
そのせいでしょうか。
「メアド、教えて頂けないでしょうか………」
とても無意識に、とんでもない発言をしてしまいました。