腐った男子です。

□事件、2035室
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「なあ、良平」

何か思案していた陽一さんが、僕だけに聞こえる声で、そっと耳打ちしてきました。

「何でしょうか?」

答える僕の声も、当然小さくなります。

「会長って、アレのこと知ってんの?」

アレの事って、もしかして、もしかしなくても、アレですよね…?
僕が会長の親衛隊員(仮)になった事、ですよね……?

「し、知らないと思うんですけど……」

仮入隊以降、お茶会には毎回参加していますが、会長が顔を出した事はありません。
正式に入隊したわけでもないですし、モモ先輩も報告していないと思うんです。

……報告したところで、誰? って思われそうではありますが。

「まー、とりあえず。お茶はもう1人分用意しないとな」

あっ、そんな楽しそうな顔をして!

他人事なので楽しむ気満々の陽一さんを、ついつい恨めしく見てしまいます。

「……外部組って、仲いいんだな」

「え?」

ポツリと呟いたのは、会長で。
まるで拗ねているような口調に、驚いてしまいました。

「光輝?」

副会長も首を傾げて、会長の顔を伺っています。

「なんでもねえ。っつか、集まって何すんの?」

「何って、お茶しながら話をするだけだよ。興味がないなら、光輝は帰ればいい」

そう言ってニッコリ笑う副会長は、少し腹黒く感じました。

……腹黒副会長は王道なので、とてもいいと思います。はい。







それから僕達5人は、比較的穏やかに会話を楽しんでいます。

共通の話題などは限られているので、どうなるかは心配だったりもしました。
けれどこの訪問の目的でもある、副会長と由比くんの交流は、成功しているように思います。

「ここでも生活は楽しい?」

「はい、大切な友達ができて、とても嬉しいんです。あと…」

副会長は由比くんの学校生活について、いくつか質問をして。
由比くんも副会長にいろいろと話しかけ。

未だぎこちなさは残るものの、こうやって機会を設けていれば、時間が解決してくれるのではないかと感じました。

「……だよね、良平くん」

「ほぇっ⁉︎ あ、はい、そうですね!」

会話が途切れたら僕に話が振られる為、萌えつつ傍観するというわけにもいなかいのですが。


そして残ったお2人、陽一さんと会長は、意外にも砕けた様子です。

「安くて美味いってのは、鉄板なんですよ」

「そうなのか。しかしそんな価格帯で…。調べてみる必要があるな」

上流階級の人間である会長は、陽一さんの話す庶民的な話に興味を抱いたようで、あれこれ質問しては、『へー』などど言っています。

でも会長に立ち食い蕎麦を勧めるのは、どうかと思います。陽一さん……。


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