腐った男子です。

□事件、2035室
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とにもかくにも、まったり歓談中といった感じで、和やかな空気が続いていました。
けれどそれは最初のうちだけで、次第に話題が尽き始めていきます。

仕方ないと言えば仕方ないですよね。
雑談の話題が途切れないほど、親しいわけでもありませんから。

どうやって間をもたせようか、考えあぐねていると、陽一さんがポツリと呟きました。

「こんだけ人数いると、人生ゲームとかやりたくなるなー……」

「は?」

「……何だい、それは?」

会長、副会長が揃ってポカンとした顔をするので、僕と由比くんは顔を見合わせてしまいます。

「え、先輩方、人生ゲームを知らないんですか? あんなに有名なゲームなのに?」

陽一さんの問い掛けに、僕と由比くんも頷きます。
子供の頃、誰でも1度は遊んだ事があるであろうボードゲームを、まさか知らないだなんて。

「知らない…けど。そんなに有名なの?」

僕達を見ながら、不安そうな顔をする副会長。

「穏やかじゃねえ名前のゲームだな。どんなのだよ?」

好奇心いっぱいといった顔の会長。

どんなと言われましても、説明は難しいです。
あのゲームの醍醐味はたくさんあって、実際にやってみたほうが……。

「あっ!」

「えっ?」

「僕、たぶん持ってきてます!」

そう言って立ち上がったのは、由比くんでした。

「持ってきて、いるのですか…?」

けっこうな大きさなのに。

「うん。寮で友達ができるか不安だったから、一緒に遊べるようなものをいろいろ持ってきてて」

寮部屋にテレビはありません。
一階の娯楽室や食堂にはありますが、共用スペースなので、ゲーム機などを使用するのは不可能です。

そうなると持ち込める物は、小型のゲーム機やアナログなゲームなどに限られます。
かく言う僕も、いくつかのゲーム類は持ち込んでいました。

「ちょっと探してくるから、待ってて」

「あ、じゃあ机の上は片付けておきますね」

「は? そんなに場所取るのか?」

「ボードゲームですから。それなりに大きいですよ」

ほどなくして、由比くんは人生ゲームを抱えてリビングに戻ってきました。
発売以来、いろいろなタイプの物が販売されていますが、比較的古めの物のようです。

「昔アパートの隣に住んでたお兄さんが、自分はもうやらないからってくれた物なんだ。だからちょっと古いけど……」

「いーじゃん、それくらいのが俺は好きだよ」

ちょっと気まずそうだった由比くんに、陽一さんがフォローを入れます。

でも僕も同感でした。
こういうゲームって、古いほうがシンプルでわかりやすいと思うのです。

今回は初心者プレイヤーがお2人いるのですし、充分遊べると思います。


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