腐った男子です。

□事件、2035室
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「え、えーと…。あ! ぼ、僕も自分の部屋を探してきます!」

いたたまれません。
とても、いたたまれまないのです。

なのでこの場から逃げる事を選択します。


パタパタと小走りで自室に入り、ふうと息を吐き出しました。

いくら空気が和んで親近感を抱けたからと言っても、会長と2人きりというのは精神的によくないですね。
不機嫌さが怖かったというのもありますが、やはりあれだけの美形さんですから。
思わず魅入ってしまいそうで、ドキドキです。

さて、一息吐いたところで、目的のゲームを……、


「ふーん。これがお前の個室? 一般の個室って案外狭いんだな」



振り向けばそこに、会長が。



な、何故いるのですか!?
ノックもなしに入ってくるなんて、心臓に悪すぎるのですけれども!?

「ちょ、あの、な、なんっ、」

「あ? 何だよ、すげー数の本だな。漫画? お前、漫画が好きなのか?」


!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「ダ、ダメですっ! それはっ!!!」

それは、BL漫画ばかりの棚なのです!

共同スペースはともかく、個室に入る機会があるのは陽一さんと由比くんくらいのもので。
そのお2人は、僕が腐男子である事を知っているわけで。

なので人目をはばかりたいBL漫画も、隠す必要がありませんでした。
隠す必要がなければ、いつでも読めるように取り出し易い場所に置いていたわけでして。

取り出し易いその漫画を、会長が手に取ろうとしています。
もちろんそれをただ傍観していたわけではありません。

取り返そうと頑張りましたが、体格的にも差がある会長に、僕の必死な制止行動が通用するはずもなくてですね。

「あ? 何だ? この漫画……」

い、いやああぁぁぁぁぁ!!!
見られてしまいましたぁぁぁぁぁぁぁ!!!

「やっ! か、返して下さい! 見ないで下さいぃ!」

「は? ちょ、待てって! まだ読んでねえよ!」

「読まなくていいんですー!」

会長の手から漫画を奪い返そうと、精一杯手を伸ばします。
けれど漫画は、僕の手には戻りせんでした。

取り戻させまいとした会長が、漫画を持つ手を高く上げてしまったからです。

それを取り戻す為に背伸びをしたところで、僕の身体はバランスを崩して斜めに傾きました。

「…っ!」

このままでは、倒れてしまいます。
でももうどうしようもありません。

痛みを覚悟して目を瞑り、身体をギュッと強張らせました。


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