腐った男子です。

□事件、2035室
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「中谷!」


ボスンッ


………え? あれ?
痛く、ない………?

恐る恐る開けた視界には、見慣れた部屋の天井が。

「っぶねー…っ」

耳元で聞こえる、会長の声…?

さらに恐る恐るその方向に首を動かして、固まってしまいました。

「おい、大丈夫か?」

「……………」

ちか、近いです。
目の前に、会長の顔があります。

そして僕の腰には、会長の腕が回っていました。

ええと、つまりですね。
この状況からするとですね。

倒れてそうになった僕の身体を抱き込み、ベッドへ倒れこんだ、ーーと。

「すっ、すみませ……っ!」

慌てて起き上がろうとしたのですが、会長の腕に抱き込まれたままだった為、失敗に終わります。
再びベッドに背中を預けた僕を見て、会長がムクリと起き上がりました。

起きられると思った次の瞬間ーーー、

「おい」

「……っ!!!」

ちょ、何故僕の上に乗し掛かっているのですか!?
マウントポジションですよ!?
押し倒されたみたいな体勢になってます!

「や、やです! 退いて下さ…っ!」

「中谷」

あ、あれ?
そう言えばさっきも、僕の名前を呼びませんでしたか…?

会長は僕の名前なんて、覚えてなさそうだと思っていたのですが……。

不思議に思って見上げた先、まだかなりの至近距離にあった綺麗な顔は、眉をしかめて僕を見下ろしています。
そして表情そのままの不機嫌な声で、次のように言いました。


「お前、俺の親衛隊に入ったって?」





い、いやあああぁぁぁぁぁぁ!!!!

「なっ、なななな何でっ!?」

何で知っているのですか!?
何で知っているのですかーーー!?

「俺は自分の親衛隊員は全員記憶してんだよ。新入隊があれば連絡がくるようにもしてある」

完全にパニック状態になった僕に、会長は不敵な笑みを浮かべます。

「セフレ断って親衛隊って、こっちが何のつもりだって聞きたいところだよ。しかもさっきの漫画、アレ男同士で抱き合ってる絵みたいだったけど、お前ノーマルだとか言ってなかったか?」

「そそそそそそれはっ、それはですねっ!」

親衛隊は正式入隊したわけではなくてですねっ!
BL漫画が好きでも、自分がそうなりたいわけではないのです!

「言い訳なら聞かねえよ」

「えっ、んむっ!?」

反論しようとした僕の唇が、暖かく柔らかい『何か』で塞がれていました。

はい。現実逃避です。
わかってます。
わかってますけど、でも現実を受け止めきれません。


だって、だって、僕ーーー、





会長に、キス、されています。


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