腐った男子です。

□接近、レクリエーション
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目の合ったミドリ先輩が、『何してんの!』と口パクで言っています。
表情からして怒っているというよりは、心配して下さったようです。

とにかく目立たない位置に落ち着きたかった僕は、小走りでミドリ先輩の元に行き、そのまま先輩の後ろに隠れるような立ち位置をキープしました。

「今日は会長からお話があって、わざわざお越し頂きました。みんなよく聞いて」

騒ついていた隊員達を見回し、モモ隊長がそう告げた瞬間、一気に皆さんが静まります。
よくはわかりませんが、皆さんと同じように、何か話そうとしている会長を見上げました。

「1年は知らないと思うが、テストが終わったこの時期は、毎年生徒会主催のレクリエーションが行われる。簡単に言うと全学年混合の親睦会だな。主役は1年で、話してみたい先輩のテーブルを回って会話を楽しむって催しだ」

バタバタしていてすっかり忘れていましたが、そう言えばそんなイベントがあると、入学時のしおりに書かれていました。
詳細は毎年変わるらしく、明記されていなかったのですが、今年はお茶会拡大版、といった感じだそうです。

「わかってるだろうが、生徒会を中心に、人気のある奴は全員の相手はしてやれない。機会の持てない相手を優先するっつー意向があるから、親衛隊に入ってる奴は対象のテーブルに行く事を禁止する。つまりお前らは俺のテーブルに希望は出せない。その代わり、機会を設けて埋め合わせはするから、我慢してほしい」

会長はそう言って、真摯な態度で頭を下げました。

「そんな! 会長、頭を上げて下さい!」

「そうです! そんなの、当たり前じゃないですか!」

「僕達、ワガママは言いませんから!」

集まっていた隊員達は口々に、けれど皆さんが揃って同意の言葉を口にしていました。
その統率の取れた様子に、感動してしまいます。

会長の親衛隊は、いつも和気あいあいと仲の良い、素敵な隊だと思っていました。
けれどセフレ隊員だとか、恋愛感情だとかがあって、内心まで表面通りに穏やかだとは限りません。

実際、僕がセフレ入隊だと思われていた時は、あからさまに邪険な態度を取られもしました。

でも会長を思いやる気持ちは強く、迷惑を掛けようなんて人は1人もいないと思えます。

隊員にそんな気持ちを抱かせるのは、普段のまとめ役であるモモ隊長だけではなく、会長自身の努力あっての事。
自分の親衛隊にアッサリと頭を下げて見せるなんて、プライドが高い人には出来なさそうなのに。

余計な混乱や悪感情を抱かせない為にそれができるなんて、凄いですよね。


やっぱり会長は、ただ優秀で美形なだけの人ではありません。
皆さんが憧れる存在で、尊い人なのですね。


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