短編小説
□若狭くんの恋バナ
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3周年記念リクエスト小話
遊様リクエスト
【カプ】西×若狭
【お題】若狭の嫉妬のち甘々
くもりのちあめ
なんてゆーか、頭殴られたみたいに『ガーン』って感じ?
いや、そりゃ西くらいイケメンだったら、女の子にモテモテなのも当然なんだけどさ。
でもオレが会計しに行ってる間に逆ナンされるって、それどーなの?
「……………」
「若狭、終わったか」
「連れってこの子ぉ? ヤダ、超イケてんじゃん! アタシの友達呼ぶから2×2で遊ぼーよ!」
なんかいかにもギャルって感じの女の子が、西とオレを交互に見ながら携帯を操作しだした。
ってかイヤ、ムリだって。
いちおー今、オレと西は放課後デート中だし。
心の中で反論するものの、もちろん口に出したりはしない。
かなりモヤモヤするけど、西がどうやって断るのかなって気になって見てたら、
「今日は予定あんだよ。また今度な」
と言って微笑みました。
………何ソレ!? 何ソレ!
「ほら、行くぞ」
どさくさに手を繋がれて引っ張られるけど、それどころじゃない。
『マジ? 絶対だよ!』と念押ししてる女の子が見えなくなって、ようやく西がオレを振り返った。
「悪ィな、……って、お前」
「ナンデスカ」
「………怒ってんのか?」
えぇ、そーですよ。
怒っちゃ悪いですか。
思いっきりブーたれ顔で、質問には答えない。
けどオレが怒ってんのは、めちゃわかりやすいと思う。
ついでに、何で怒ってんのかも、バレバレだと思うけど。
「ああ言っとくのが1番アッサリ振り切れんだよ。下手に断ると粘られるから」
へぇー、そうなんですか。
おモテになってたいへんですねぇ。
「…………」
「にょわぁ!?」
「頬ふくらませんなって。すっげブサイクになってんぞ」
「イテテテテ! ほっへらひっはんらいれにょ!」
「ぶっは、ますますブサイク」
自分がやってるクセに、ムキーッ!
やっと解放された頬は、ヒリヒリと痛いくらいだった。
自分でスリスリ摩っていると、オレのより大きな手が、オレの手ごとすっぽり包み込んでくる。
「西……?」
ブーたれていたのも忘れて顔を上げると。
チュッ
「……っ!!!!!」
に、西さーんっ!?
ここをどこだと思ってんですかーっ!?
人通りは少ないけど、全然街中だよ!?
「嘘。可愛い」
「!!!!!!!!!」
も、なんなのーっ!?
西ってば、マジ恥ずかしいっ!
「可愛いとか、そーじゃなくて!」
「可愛いよ。嫉妬丸出しで。そんなに俺を喜ばせてどうすんだ?」
パクパクと開いた口が塞がらない。
なんかオレ、全然西に勝てなくね?
「………もういい」
「若狭」
「もう怒ってない。けどスタバでフラペチーノ奢って」
ハッキリ言って、理不尽な要求だ。
ナンパされたのだって、西が悪いワケじゃない。
ただ単に、オレが面白くなかっただけ。
「なんなりと。スコーンも付けるか?」
言いながら再び繋がれた手は、今度はいわゆる恋人繋ぎで。
街中で人目もあんのにとか、思わなくもないんだけど。
さっきまでどんより雲ってたオレの気持ちは、手の温もりが嬉しかったりするワケで。
「……西ってアメしか使わないよね」
「雨?」
「そーじゃなくて」
飴と鞭の、アメなんだけど。
なんか説明すんのも、恥ずかしい。
だってなんだかんだ言って、甘やかされるの、嬉しいから。
end
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