短編小説
□貴方のお望みのまま
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小学生くらいの頃、男子は好きな子をイジメて気を引くもんだって、大人の誰かが言ってた。
でもそれって、あくまでも子供の時だけだよね。
じゃあたぶん僕は、本当に嫌われているんだろう。
貴方のお望みのまま
「あーあー、根暗なヤツが来ちまった。教室まで暗くなるからヤなんだよなー」
教室に入ると同時に聞こえる、そんな言葉。
吉野 直幸(ヨシノ ナオユキ)。
それが僕の名前。
小さな頃から内気で引っ込み思案。
人と目を合わせる事が苦手な僕は、小さな頃からイジメられてばかりだった。
高校生になったらきっとマシになるだろうと思ってたけど、やっぱり甘い考えだったみたい。
見た目が地味そのものってとこが拍車を掛けてるのかもしれないけど、イメージチェンジもできないまま、今日に至ってる。
「何シカトしてんだよ、直幸ちゃん。朝はオハヨーだろ?」
声を掛けてきたのは、同じクラスの柳 望(ヤナギ ノゾム)。
出席番号では僕のひとつ前で、明るい茶髪にスッキリした顔立ちの美男子だ。
明るいけど素行はよくなくて、いわゆる『不良』ってやつだった。
「お、おは、よう……」
ビクビクしながら、小さな声で挨拶を返す。
「朝っぱらからシケてんな。ウゼェ」
その言葉に、身体がギュッと縮こまった。
――――怖い。
僕はこういうタイプの人間が苦手だ。
まるで笑いの種みたいにからかってイジメて、興味がなくなったらいないみたいに扱われる。
入学して1ヶ月。
柳くんはまだ飽きていないらしく、席が前後な事もあって、何かというと絡んできた。
今のところはまだ、暴力を振るわれたりはしていない。
それだけが救いだったけど、それもいつまでもつのかわからないって、僕は知ってた。
だってイジメは、エスカレートするものだから。
そんな事、わかってるけど―――…。
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