短編小説

□貴方のお望みのまま
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3周年記念リクエスト小話

蛍様リクエスト
【カプ】柳×直幸
【お題】やきもち(直幸が)


 ホンネ


一緒に帰る約束をしている放課後、僕は同じ教室の少し離れた場所で、皆に囲まれて談笑している柳くんを待っていた。

「ね〜、たまにはいいじゃん! 最近マジで付き合い悪いよぉ?」

綺麗にお化粧をした女子生徒が、そう言って柳くんの腕を引いている。
彼女の発言に、他のクラスメート達も同意していた。

それもそのはず。
僕と付き合うようになってから、柳くんは僕と過ごす時間を優先している。

皆からすれば、そんな柳くんを訝しんで当然だ。

元々柳くんは人気者で、僕ばかりを優先するのもおかしくて。
だからたまには皆と遊んできてって、そう言うつもりだった。


『僕の事はいいから、行ってきて』


そう書いたメール送信画面を見つめ、ため息を吐いた。

理屈とは裏腹に、身体が拒否反応を示している。
たったこれだけのメールを、送れないなんて。

自分の狭量さに自己嫌悪しそうになりながら、本文を書き変える。


『行かないで』


これは僕の本音。
だって『皆』の中には可愛い女の子もいて、明らかに柳くんを好きって子もいるから。
そんな子と一緒に、遊びに行ってほしくなんてない。

でもこんなメール、送れないよ。


もう1度ため息を吐いて、メールを削除しようとした時だった。

「だから待てって、おわっ!?」

「っ!」

背後から、急に衝撃。
廊下から飛び込んできた同級生が、勢い余って僕にぶつかったらしい。

「あー、わりぃ」

「う、ううん。大丈夫」

謝りながら去っていく背中を見送ってから、握っていた携帯を見て、

「………っ!」

盛大に、青ざめた。

だって、送信完了って。
送信って、もしかしなくても、さっき消すつもりだったメール?

ほどなくして、教室内に柳くんの着メール音が響いた。
周りの友達に断って、柳くんが携帯を開く。

2、3操作をして、目を見開き。
そして視線を、僕へ―――、


「……っ」

やってしまった。
居た堪れなくなった僕は、慌てて教室を飛び出す。

「直幸!」

柳くんが呼んだ。
でも振り返れない。

ただ夢中で逃げたけど、さほど距離のない階段で、柳くんに腕を掴まれていた。

「直ゆ…、」

「ご、ごめんなさい…! ほ、ホントはあんなの送るつもりなくて、あんなわがまま……っ」

振り向き様に、言い訳しながら謝る。
もう遅いかもしれないけど、あんなわがまま言って、嫌われたらどうしよう。

不安で視界が霞みそうになった僕を、思ってもみなかった感触が包んだ。

「柳く…、ん……」


僕、抱き締められてる……?


「なあ、直幸。正直に言って」

「え?」

「あいつらに囲まれてる俺を見て、妬いた?」

柳くんはどこか嬉しそうに、僕にそう訊ねた。
その声に、素直になる勇気をもらった気がする。

「…………妬い、た」

「行かないでほしい?」

「うん……」

「じゃあ、言って」

離された身体は、でもまだ近くて。
お互いの息が掛かりそうな距離で、まっすぐ目を見つめられた。

「………行かないで」

僕は、柳くんを独占したいよ。

ありったけの勇気で言えば、柳くんの顔がとろけるような笑みに変わった。
そして優しい声とキスが、ゆっくり僕に降ってくる。


「……超嬉しい」



 end

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