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□天使な“子”生意気
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あり得ないことが起こった。
いや、「一体何の研究をしているんだか」と訝しむほど奇妙な生物兵器(と、その失敗作)を生み出してきたミカエル・シャークマンだったが、今回ばかりは本気で至上最大の危機に陥れられた。というのも、その刺客の原案者はノエルである。ミカエル最大の失敗は、ノエルの脳をダイダロスに移植し、取り逃がしてしまったことだろう。しみじみ思う。ダイダロス、いやノエルがテラ側に残っていなくてよかった。
とはいえ、リュークが至上最大のピンチに見舞われていることに変わりはない。大問題なのだ。島のボスの沽券に関わる大事件だ。
子供に、なった。
天使な“子”生意気
「もとの十五歳だって、まだまだ子供なんだから」
およそ5歳児程度にまで縮んでしまった身長のせいだろう、励ますのか諦めさせるのか不明瞭な言葉を掛けるダイダロスが、異様にでかくて怖い。サミアドもこんな風に見えていたのだろうか。だとして、あの生意気な態度をとっていたら大物だ。
「そうよ!ダイダロスも言ってたじゃない。テラの連中が改良したとしても、効果はもって一週間だって」
「やだぁ〜超もちもち赤ちゃん肌!あったかーいー」と無邪気に頬を擦り寄せてくるキッチェも、随分大人に見える。不貞腐れるふりをしていても、むず痒いような照れ臭いような、今まで抱いたことのない複雑な気持ちになる。
にこにことオレを見つめていたマリアが、ふと困ったように口元に手をあてた。
「でも、リュークが元に戻るまでテラから敵が来たら……どうしましょう」