世界はまるで関係ないかの様に

□3
1ページ/8ページ

まだ日も昇らない空は薄暗く、いくつもの星が瞬いている。吐息は白く、寒さに手はかじかむ。両手を口元にもっていき、息をかけることで少しでも寒さを凌ごうと心掛けた。そんなことをしながら、駅への道のりをひたすらに歩く。この暗さの広がる道に、人の姿を見ることはなく、凍てつく空気を一人切っていく。静寂の中に、足音は妙に響き渡る。あまりに冷たい空気に顔をマフラーに埋め、下を向いて歩いていると、足は駅に辿り着いていた。
「…あー…居ないかぁ。」
人気もない薄暗いホームへ入り、辺りを見回したが、人影はどこにもなかった。ここは慎の暮らしていた施設から一番近い駅であったため、ここから電車に乗るとみていたが、どうやら外してしまったようだ。奴は今頃、他の駅で電車を待ってるのだろうか。誰も居ないホームに落胆し、ため息は白い吐息となって空を舞う。居ないと分かった途端何だかどっと疲れを感じ、ホームの寂れたベンチに腰を掛けた。ベンチはだいぶ古いのか、少しの身動きでも大きな軋みとなって返ってくる。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ