世界はまるで関係ないかの様に

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まもなくして担任が教室に戻り、雑談をしていた生徒たちは席に戻っていく。先生は、俺たちに最後の言葉を贈り、生徒たちはその言葉に涙を流した。俺は、そんな光景を他人事のように眺め、慎は席に着いてからも窓の外を眺め続けていた。
卒業証書も全員に配られ、ホームルームの終了の号令がかかった。同時に、教室はざわめきに包まれた。皆、これから行われる謝恩会へ向かう準備をし始め、それぞれの親たちは会場への交通手段の相談をはじめる。会場まで誰々と乗り合わせて行くやら、バスで向かうやらと、そんな声が教室内のあちらこちらで聞こえた。俺も、そんな話を母親と交わし、校門で落ち合う約束をした。母親は俺との話を済ませると、他の母親へ挨拶をしに人混みへと紛れ、やがて母親の赤いワンピースは見えなくなった。仲の良いクラスメイトたちはもう会場へ向かったのか姿は見当たらず、仕方なく先に校門で待っていることにした。
階段を降りながら、もうこの学校へ来ることはないのかと、ぼんやりと思った。楽しいこともいっぱいあった。辛いことも、悲しいことも。そして挫折もした。挫折したっきりのままだ。それっきり、自分の気持ちをうやむやにしたままだ。
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