きらきら

□しがつ
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意識が溶けるようなだるい日射し。生暖かくて眠ってしまいそうだ。桃色の花びらが、ひらひらと視界を横切っては地面に落ちる。見上げる桜の木には、もうほとんど花は残っていない。若葉に覆われる木が、春の終わりを知らせる。
入学して早いもので、二週間が経とうとしている。
友達は出来てないが、クラスメイトとはちらほらと話はする。勉強もついていけている。誰も俺に攻撃する奴は居ない。俺の望んでいた世界。平和で穏やかな日々。なのに。なのに何故、こんなにも虚しいんだろう。
結局のところ、俺はあいつらに負けたのだろうか。負けまいと意地で学校に通い続けたが、その結果俺は何かを失ってしまったのだろうか。何か、大切な感覚を。
「ねぇ、君、西河くんだよね」
一瞬、空耳か妄想の産物かと思ったが、現実に誰かが俺に話し掛けていた。
「隣、座ってもいいかな」

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