進入
□居ない君を抱く今
1ページ/12ページ
クエスチョン。
――もし、もう抱けない人が目の前に現れたらどうしますか?
アンサー。
――そりゃあ、抱くしかないよな?
まるで無菌室のように白くて埃のない、そんな廊下を靴音響かせながら歩き、とある一室で立ち止まった。
どこか躊躇う腕をゆっくりと持ち上げ、扉の横に付いているベルを押す。
ビー。
どこまでも無機質で耳障りな音が反響していく。
「……はーい? 獄寺君?」
扉は一瞬の躊躇もなく開け放たれた。
「あ、れ?」
「よっ、ツナ」
ほよっとした表情が隙間から覗く。
「山本! どうしたの、なんかあった」
「いや、ちと用事がな。……獄寺は出ているのか?」
開かれた扉から部屋の中を見る。家具が邪魔をしてはっきりと確認できないがソファや、二段ベッドにいる気配はしない。
「うん。なんか落ち着かないとかなんだとか言って出ていっちゃった」
「はは、獄寺はいつの時代でも獄寺なのな」
「それなら山本だってそうだよ。なんてか、十年後の姿なのにオレの知っている山本とかわらないし」
じっと綱吉の視線が山本に定まる。
十年前でも随分と背が高かったが十年後の今はもっと高い。綱吉の身長ではかなり仰がなければ顔まで見られない。
「そっかー?」
「そうだよ」
互いにヘラリと笑いあう。