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□居ない君を抱く今
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クエスチョン。

――もし、もう抱けない人が目の前に現れたらどうしますか?



アンサー。

――そりゃあ、抱くしかないよな?





まるで無菌室のように白くて埃のない、そんな廊下を靴音響かせながら歩き、とある一室で立ち止まった。

どこか躊躇う腕をゆっくりと持ち上げ、扉の横に付いているベルを押す。


ビー。


どこまでも無機質で耳障りな音が反響していく。



「……はーい? 獄寺君?」



扉は一瞬の躊躇もなく開け放たれた。



「あ、れ?」
「よっ、ツナ」



ほよっとした表情が隙間から覗く。



「山本! どうしたの、なんかあった」
「いや、ちと用事がな。……獄寺は出ているのか?」



開かれた扉から部屋の中を見る。家具が邪魔をしてはっきりと確認できないがソファや、二段ベッドにいる気配はしない。



「うん。なんか落ち着かないとかなんだとか言って出ていっちゃった」
「はは、獄寺はいつの時代でも獄寺なのな」
「それなら山本だってそうだよ。なんてか、十年後の姿なのにオレの知っている山本とかわらないし」



じっと綱吉の視線が山本に定まる。
十年前でも随分と背が高かったが十年後の今はもっと高い。綱吉の身長ではかなり仰がなければ顔まで見られない。



「そっかー?」
「そうだよ」



互いにヘラリと笑いあう。



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