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□並盛鳥物語
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今日もさんさんと太陽が昇る。
その爽やかな輝きは並盛町にも平等に降り注がれていた。


「コケー! きょくげーん!!」


そんな陽光柔らかな中、力強いを通り越し、どこか暑苦しいまでの雄叫びが民家の庭からあがった。

声の主は笹川了平。がっしりとした雄鶏だ。この朝の雄叫びは彼の大切な日課である。これをしないと一日が始まらない。


「ははっ、今日も元気っスね」


そんな了平の頭上からカラリとした声がかけられた。
俊敏そうな体躯の鳩だ。名は山本武。


「おお、山本じゃないか。早いな、どこかに出かけるのか?」
「今日はツナと遠出する約束なんスよ」
「そうか……、気を付けていけよな」
「もちろん!」


そういういなや、武は鳩にしては黒い翼を勢い良くひろげた。


「じゃ、いってきます」
「おう。沢田によろしくな」
「伝えておきます」


パタリと翼を体に叩きつけるように動かし、了平の前で旋回してみせると武は待ち合わせ場所へと向かった。



ぱたぱたと翼を強くはばたかせること数分。待ち合わせの場所である、並森一大きい樹へ武は辿り着いた。


「んーと……、ツナ来てっかな?」


手ごろな枝へと留まると、軽く左右に首を振り探る。が、どうやらまだ待ち人は来ていないようだ。

そういえば、鳥は性質状朝方であるはずなのに、待ち人は朝に弱かったはずだ。

すっかりそのことを失念していた。


「……まだ寝てっかな」


漠然と思いついたかのように、なにも考えないでそう言葉にだしただけであったが、考えれば考えるほどそうしか思えない。


「うし、迎えに行くか!」


思い立ったらすぐ行動。

武は再び翼をひろげたのだった。




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