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□わからず屋におめでとう
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緑栄え渡る並盛町。
今日も今日とて平和な日常が始まっていた。


「えーと、次の準備はっ……と」


パタパタとちいさな翼を羽ばたかせてなにやら準備していているのはスズメの綱吉だ。

これまたちいさな口には赤い木の実を咥えて運んでいる。


「これと、あとなんだっけ」


ちゅんっと小首をかしげて悩む姿はとても楽しそうだ。これから先おこるであろうことを思ってのことだろう。


「よいしょっと」


住処にしている木に止まると、巣に赤い実を置いた。そして思案気に巣に溜めた色とりどりの木の実を見やる。


「あとは、黄色の木の実で終わりかな」


「よし、探してこよう」と翼を広げて飛び立とうとした瞬間――。


「やぁ綱吉。今日は珍しく早起きだね」


颯爽と一羽のヒバリが綱吉の目の前に現れた。


「ヒっ、ヒバリさん!」


慌てた様子で綱吉が巣に戻る。

一羽のヒバリ――恭弥はパッと枝に止まると綱吉に近寄ってきた。綱吉は翼を広げ巣の中にある木の実を隠す。


「おおおおおおはようございます!」
「なに驚いてるの」
「いえ、なんでもないです!」
「ふーん……」


探るような視線から逃れようと必死で眼球を動かしながら返答する。恭弥はどこか気に食わなさそうにため息をつくとさらに綱吉に近付いた。


「な、なんかご用事ですか!?」
「なに? 用事がないと僕は君に会いに来ちゃ駄目なの」
「滅相も御座いません!」


いや、実は心臓に悪いんであんまり来てもらいたくないんですが……。とは流石に言えず、引き攣った笑顔をうかべる。


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