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□跪くのは君だけ
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「我の前に現れ、いずこより来る守護するものよ……」
綱吉は体の中で力が捻れるように湧き出るのを感じる。
ここまではいつも上手くいく。
だが、ここから先がどうしても巧みに力を昇華できないのである。
この体の中に蓄積された力を魔法という形に転化させて放出すればそれでいいわけなのだが、綱吉はどうもそれをコントロールすることが苦手であった。
「聞き入れよ、我を守護するもの。この声を……」
呪文は願掛けであり、力を増幅させ、自身の力にこの魔法を発動させると知らしめ、放出しやすいようにするものである。
つまるところ、呪文だなんてあってもなくても良いのだ。現にリボーンのような魔法使いは呪文を詠唱せずに魔法を発動させている。
けれども、力を発散することのできない綱吉はこの呪文に縋るしかない。
「守護するものよ、……守護するものよ……!」
綱吉の声が震えてくる。
ああ、どうしても自分は召喚することが出来ないのか。結局、自分は自他認めるダメツナであるのだ。
目の端に涙がたまっていく。
クラスメイトたちの厭きれ、嘲笑いが含まれた視線が突き刺さる。サワサワと小声で囁かれる悪口が冷たい。
「おい、ツナ」
そんな気分が悪くなるような空間をリボーンが切り裂いた。
「てめぇ、自分で出来ねぇ出来ねぇと思い込んでいるだろ」
「せん……?」
「いっとくがな、俺は能のない奴にはモノを教えるつもりはねぇ」