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□わからず屋におめでとう
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それなのに意固地になってしまった心は溶けることなく反発してしまう。
「そんな、そんな言い方。オレにだって……」
こんなこと、いいたいわけではないのに。もうこれ以上悪化させたくないのに。
「オレの気持ちわかってないくせに」
「っ!」
「一方的に、言うだなんて……」
なのに。
「ヒバリさんのばか……っ!!」
言ってしまう。
こんな自分が情けない。格好悪い。
思わず涙腺が緩んでくる。けれども決して泣くなんてしない。こんな泣き落としみたいな行動ズルイじゃないか。
そう思うのに、感情に正直な綱吉の身体は目を熱くする。
「綱吉」
ふわり、と恭弥が綱吉のそのちいさな身体を抱きとめた。
「ヒバリ、さん……イヤっ!」
こんな気持ちがぐちゃぐちゃな時の自分を見られたくない。綱吉は必死に離れようとするが、今度はしっかりと抱きつかれてしまって離れられない。
ぎゅっと強く強く、ひたすらに強く抱き締められる。
「っ、いや、こんなオレ……」
酷いことをしたのは綱吉(こっち)だ。
一方的に喚いたのだって綱吉だ。たしかに恭弥も頭ごなしに言ってきたが、声を荒らげられたり酷いことはいわれていない。
「オレっ!」
「うるさいよ」
恭弥はそれだけを口にすると、ふただび強くぎゅーと綱吉をただただ抱き締めた。
(ひばりさん……)
ああ、心が解れていく。先ほどまであんなにもガサガサに逆立っていた心が凪いでいく。
(ヒバリさん――)
落ち着いていく。
ゆっくりと、けれども確かに。
「……くるしいです」
暫くして綱吉はそれだけをようやく口にした。
「うん」
頷いたにも拘らず、抱き締める力は変わらない。そのことになぜか安堵を感じる。
「ごめんなさい」
安心したらすらりと謝罪の言葉が飛び出てきた。