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□わからず屋におめでとう
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ようやく謝れたそのことに更に安堵する。


「そうだね、僕にむかって馬鹿だなんて。君ぐらいしか言わないよ」
「っ! だってそれは……ヒバリさんが…………いえ、つい、ごめんなさい」
「ワオ、いやに素直だね」
「だって」
「後ろめたい?」
「…………ぅ」


抱き締められたままなので顔がみられないが、綱吉はふっと恭弥が笑ったのを感じた。


「僕の方こそ悪かったね」
「ヒバリさん!?」


まさか恭弥が謝るだなんて想像もしなかった綱吉は腕から抜け出し恭弥の顔を仰ぐ。


「失礼な子だね。そんなに驚かなくてもいいでしょ」
「だって……」
「さっきのは僕の我が儘だったから」


(ヒバリさんにワガママっていう概念がちゃんとあったんだ――!)


なんだか論点がずれたところに驚きを覚えつつ、ポカンと恭弥の顔を凝視する。


「今日、なん月なん日?」
「五月、五日……です」
「そう。なんの日かわかる?」
「わかりますって! ……ヒバリさんの誕生日です!」


綱吉はムっとする。まさか自分が忘れていたとでも思っていたのだろうか。

そんなことはない。だって今日のためにプレゼントにする色とりどりの珍しい木の実を集めていたのだから。

まぁ、当日を迎えた今でも全部の色が揃わなくて今でも探していたわけだが。


「正解」


恭弥は綱吉から視線を外すとどこか言いにくそうに喋りだした。


「だから、綱吉と一緒に行たかったんだ。誕生日だからね」


それはつまり――?


「オレに……」


お祝いしてもらいたかったということだろうか。


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