小説
□スキの理由
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「あなたが好きです」
赤と青のオッドアイが真剣な目をして目の前の少年――綱吉、を見つめる。
綱吉は居心地が悪そうに身じろぐと、通学カバンを前抱きにして一歩後退した。
意味がわからない。
それが綱吉の頭に浮かんだ言葉だった。
それも仕方がない事である。
誰だって同性から告白されたら意味がわからないだろう。
「いや、俺男だから」
「もちろん知ってますよ、綱吉くん」
「いやいやいや、理解してないだろお前!」
もう一歩後退する。
綱吉の頭はますます混乱していく。
六道骸は突拍子がなく極端な性格だが、頭の回転が早い、いわゆる賢い人間であると思っていた。
賢いという事は頭が良いという事で、つまり常識があるという事だろう。
気に入らない人間がいれば殺そうとしたり、人を動かすために残虐な行動をとったりとしているので、道徳的常識は欠落しているのだろうが、社会的な常識は心得ているはずだ。
時には不気味差さえ感じ取れる軟らかな物腰、口調等がそれを裏付けている。
それなのに、何故――。
「僕は本当に綱吉くんを愛しているのですよ」
そんなニコニコと綺麗な笑顔でいわれても困る。