小説
□奪いの廻旋曲*
1ページ/2ページ
「………何で、僕じゃいけないの……」
絞りだすかのように吐き出した声は酷くかすれており、辛さが滲み出ていた。
なんて情けない声なのか。
雲雀は自嘲気味に笑んだ。
「ヒバリ、さん?」
「綱吉はどうして……」
なんて女々しいのだろうか。
可笑しくもないのに笑ってしまう。
こんな行動は無意味過ぎる。
こんな事をしても綱吉は自分のもとへは来てくれない。むしろ離れていくだけだろう。
だけれども、雲雀は自分を抑える事は出来なかった。
もとからそう理性を抑える事をしない男だ。
それがこんなにも我慢したのだから上出来というところだろう。
我慢していたのは綱吉が本当に大切だったから。
大切だからこそ綱吉の幸せを願った。
だから身を退いた。
だが――。
そんな事端から無理だったのだ。慣れぬ事はしない方が良い。まさにその通りだったのだ。
溜りに溜まった理性は、破裂、した。
もう抑えることは出来ない。己の欲望に忠実になるだけなのだ。
それがどんなに哀しい結果になったとしても。後戻りだなんて出来ないのだ。そして、する気もないのだ。
「綱吉、僕のものになっちゃいなよ」
「なっ! ……ヒバリさんっ!!」
綱吉は雲雀の鋭い光を帯びた眼を見た途端暴れだした。
――キケン…。
頭の中で警報が鳴り響く。逃げなくてはならない。この場に居てはならない。