小説

□奪いの廻旋曲*
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「………何で、僕じゃいけないの……」

絞りだすかのように吐き出した声は酷くかすれており、辛さが滲み出ていた。

なんて情けない声なのか。

雲雀は自嘲気味に笑んだ。


「ヒバリ、さん?」

「綱吉はどうして……」


なんて女々しいのだろうか。

可笑しくもないのに笑ってしまう。

こんな行動は無意味過ぎる。

こんな事をしても綱吉は自分のもとへは来てくれない。むしろ離れていくだけだろう。

だけれども、雲雀は自分を抑える事は出来なかった。
もとからそう理性を抑える事をしない男だ。
それがこんなにも我慢したのだから上出来というところだろう。


我慢していたのは綱吉が本当に大切だったから。
 
大切だからこそ綱吉の幸せを願った。
だから身を退いた。
 

だが――。
 

そんな事端から無理だったのだ。慣れぬ事はしない方が良い。まさにその通りだったのだ。


溜りに溜まった理性は、破裂、した。


もう抑えることは出来ない。己の欲望に忠実になるだけなのだ。
それがどんなに哀しい結果になったとしても。後戻りだなんて出来ないのだ。そして、する気もないのだ。


「綱吉、僕のものになっちゃいなよ」

「なっ! ……ヒバリさんっ!!」


綱吉は雲雀の鋭い光を帯びた眼を見た途端暴れだした。


――キケン…。
 

頭の中で警報が鳴り響く。逃げなくてはならない。この場に居てはならない。




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