小説
□開放宣言
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「もう、疲れたよ」
涙腺は崩壊。
とめどもなく溢れては流れる。
「つかれた、んだ」
言葉は焦燥ばかりで枯れているのに。反するように口元は歪み、笑みを作り出す。
歪めた口元には涙が侵入し口腔を塩辛く満たしてゆく。
嗚呼、吐き気がする。
舌は窄まり喉はひりつく。胃液が逆流したときのように、酸っぱい。
「もう限界なんだ、」
許して、と言葉なしに吐き出した。
これ以上立っていることは出来なかった。破滅のときがきたのだ。脆い心はサラサラと簡単に、素早く風化し崩れだした。
崩れだすとどんなに補強しても意味をなさない。崩れたそれは薄く弱い。刹那的に治っても気付けばまた同じ場所から崩れだしてゆく。
壊れたモノは治らない。
崩壊は癒せない。
その崩壊となったモノから遠く長いこと隔離しない限り無駄なのだ。
「終わらせて、解放して」
これは哀願だ。
綱吉は自分のことなのにまるで他人事のように思っていた。
情に訴え相手を揺るがそうとする。
なんて寂しく愚かな行動。
だけれども止めるつもりは欠片も持ち合わせてはいなかった。
なぜならばこれは必然的決定事項だったから。自分をここまで育て上げ、そしてこんな精神状態まで追い詰めた家庭教師への罰のつもりだったから。