小説
□そこは特等席!
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おっどろいた。
それが扉を開けて瞬時に思ったこと。
そして続いて、ムカツク。
一秒後に感じた感情。
三秒後には行動に出ていて、ナイフを投げてやった。
――……宿敵に。
「わっ、なに! なんだよベル!!」
綱吉が心底驚いた声をあげた。それもそうだろう。扉が開け放たれた途端にナイフが飛んできたのだから。
ナイフはカツリと気持ちの良い音をたてて綱吉には大分大きい愛用している豪奢な別珍の椅子背もたれに刺さった。
「なーんでいるの?」
「なんでって、ここオレの部屋なんだけどっ!?」
どこか混乱した、震えた声をあげる。
だって仕方がない。かっこ悪いだとか、ボスにあるまじき姿だとかは関係ない。
驚いたものは驚いたのだから。
普通は部屋で寛いでいる中にナイフだなんて飛んでこないのだから。
「違うよ、綱吉。王子がいいたいのはソレ。なんで膝の上にチビが居んの」
豊かな金の前髪で隠れている眼を綱吉の膝の上へ向ける。
そこにはまるでそこが所定位置といわんばかりの至極満足げな表情でマーモンが座っていた。
「え? マーモン?」
チラリ、と綱吉が膝上のマーモンに視線を落とした。ベルフェゴールはそんな綱吉の行動にイライラしながら喚く。
「そ! なんで居るわけ!!」
「ム、僕がいたらなにか悪いわけかい? 別にベルに迷惑がかかるわけじゃないと思うけど」
「マーモンに話しかけているわけじゃないんだけど? ……黙りなよ」
一発触発。
ピリピリとした空気が綱吉の部屋を汚染していく。