混沌の書

□七転八起
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雨が降っている


その雨は止みそうに無い



それなのに笑っている自分が居る

雨が好きだからだ


「ふぅ、行きますか」


電車の時間に余裕を持って家を出る

自転車置き場に行き鍵を開ける


携帯に付けたイヤホンからテンポのいい曲が流れてる


「〜♪」

上機嫌でペダルを漕ぐ


急ぐ必要は無いのに自分が前え前え行こうとする


いつもの坂を登りきり
後はペダルを漕ぐ必要の無い下り坂だ


シャーーーーーー
ジャーーーーーー

雨と車輪の音が重なる


「………やっぱ、雨はいいな」


カーブに差し掛かりハンドルを切る


ズサッ!!


聞き慣れないけど聞き慣れた音を聞いた



「このパターンはきっと…………転ける?」

ズシャァァーーッ!!!


「…………だっせぇ」


どうやら側溝の鉄枠の部分でハンドルを切ってしまったようだ


鞄が随分遠くに飛んでってる


雨が降っているせいで制服がずぶ濡れだ


「…やっぱ、雨嫌い…………っとと、鞄鞄」



どうやら鞄の中は大丈夫なようだ


「さっすが、エナメル製だな………え〜っと?自転車はどこ行った?」


「……あのっ………田んぼの中に……」

そう言われて田んぼの方を見る


「あぁ、ほんまやな…………って、えぇ!?」


なんで自分しか居ないのにもう一つ声が聞こえるんだ?



声の聞こえた方を見る



そこには、少女が立っていた

「……………やぁ」
やっと出たのがその一言



とりあえず、自転車を取りに行く



「うわぁ、結構泥付いてんなぁ」



ある程度は雨のおかげで落ちた


「えっと、ありがとう」


少女「……はい、気にしないで下さい………」


「……………っと、ん〜………それじゃあっ!」


自転車に乗ろうとする



少女「あぁっ!……待って下さい」


「へ?」



………………………



んで、なぜか一緒に駅のバスターミナルにいます


「…………(何を話せばいいんだろう)」


少女「……あのぅ?」
「あ、はい?」
少女「……大丈夫ですか?制服?」
「ん?あぁ、こんなもんクリーニングに出せば大丈夫だよ」
少女「でも、肘のとこが…」
「…うげっ、穴デカっ」
少女「……それに血出てますし」
「体の傷は問題ないよ、自転車で転ぶのは珍しくないしね」
「そうなんですか……」
「…っと、話し変わるけど学校大丈夫?」
少女「はい、ちょっとぐらい遅刻しても大丈夫ですから、それよりも貴方は大丈夫なんですか?」
「俺は1時間くらい遅刻しても間に合う時間にしてあるから、でも君は遅刻しちゃいけないだろ?ほら、早く行った方が良いって」
少女「でも……」
「大丈夫、大丈夫、俺もこんなカッコ悪い姿見られたくないから」
少女「……それじゃあ」

そう言い残して少女は駅の方へ走って行った


「ふぅ、何だったんだあの少女は」



初対面なのに妙にひたしかったからな



「…………あっ、俺のブレザー………あの娘が持って行っちゃったか」



もしかして新手の引ったくり!?


「………ま、それはないな」



でも、名前も聞いてないし………学校ぐらい聞いといた方がよかったな



「女性恐怖症がこんなとこで仇になるとわ………はぁ…」


ま、ブレザーは帰ってこないと思おう



「学校どうしよ」


………………………





先生「んで、異装届が欲しいと」
「はい」
先生「しっかしなぁ、ブレザーが雨で濡れたからクリーニング出してきたなんて」
「真面目にずぶ濡れだったんですよ」
先生「………まぁ、仕方ねぇか、この書類に必要事項を書いて事務所に出してこい」
「どもで〜す」


トッットッットッットッットッットッッ

少し早足で事務所に向かう


「次の授業までに時間が無いからね」



………やっと付いた、なんで事務所が学校外にあるんだ?


「あのぅ、異装届をだしに来たんですけど」


用務員「ハイハイ……………はい、どうぞ」


早っ



「まぁ、済んだことだし、別にいっか」
「よっ、少年」
「ん?あぁ、掃除のおばさん」
掃除のおばさん「おばさんって呼ぶんじゃないよっ!まだ、32だし」
「それじゃあ、失礼します」
掃除のおばさん「ちょちょちょ、待ちなさいよ」
「なんでしょうか?俺はこれから授業が……」
掃除のおばさん「なに言ってんだいっ、どうせロクに勉強なんかしないくせに」
「………一様、校内で6番とってますけど」
掃除のおばさん「ナニィ!!一見低レベルそうな顔してるからドベ前くらいかと思ってたよ」
「はいはい、俺が頭良いって事がわかった所で失礼します」
掃除のおばさん「あっ!こらぁ、まだ話しは終わってないよ!」
「こっちの知ったこっちゃねえっての」




………………………

「ありがとうございました、………あ、レジこっち開いてますよー」
「よぅよぅ、精がでるねぇ」
「んを、よっす風香」
風香「なにぃ、あんた毎日バイト入ってんの?」
「ま、そだな」
風香「そんなに稼いでどうすんの?」
「全部学費」
風香「うわっ、気持ち悪っ」
「仕方ねぇだろ?両親死んじまってるし、親がわりの兄貴も寮生活だし」
風香「……まぁまぁまぁ」
「ん?どした?」
風香「…いや、頑張ってるねぇ本当」
「どういたまして」
風香「そいじゃ、けぇるわ」
「はいよ、じゃな」



………………………

「ふぅ、ただいま」
…………

「誰も居ないのにただいま………か……………兄貴はいいとして、さすがに一人は寂しいよなぁ」


……熱帯魚飼ってるけど魚は話せないしなぁ



「……やることないし………寝よ」






………………………


サァーーーーー

「……また、雨か」


時間だ、行こう



「また、いつもの道〜♪」


俺って何で傘ささないんだろ?



「そんな事考えてると、もう駅っと」


えっと、まずは自販機でブラックコーヒーをっ



「……………あのぅ」


「ん?」



振り向くとそこには昨日の少女が……


少女「……あの、おはようございます」

「……あ、やぁまたあったね」


少女「あの、これを」


手には、大きな紙袋

「ん?これは………俺のブレザー?」


少女「…昨日、私が持って帰っちゃって……すいません」


「んなぁ、謝る事なんて無いよ…………それに洗濯してあるしっ!、しかも破れてた所も縫ってある!?」


少女「…………迷惑でしたか?」


「いやいや、感謝感激………とまぁ縫ってくれたのは嬉しいとして」


少女「?」


「何故に?」


少女「え?………それはぁ」


「んんー、…………まぁいっか、とりあえずありがとうございます」


少女「いえいえ、こちらこそ」


「(何が!?)…………とりあえず名前教えて」
 

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