with you.

□1.
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その日は収録が長引き、帰宅したのは午前1時を回った頃だった。タクシーから降り、屋根のないところを数歩歩いただけなのに、全身ずぶ濡れになるほどの大雨が降っていた。オレは部屋に入り、濡れた洋服を洗濯機に放り投げ、フロに入る。この瞬間が1日でもっとも好きな時間だ。温かい湯気に包まれ、湯船の中でウトウトしかけた時、この心地よい沈黙を破る物音がオレの耳を突き刺した。

―ドサッ

物音はどうやらベランダの方から聞こえたようだ。オレはあわててTシャツと短パンを着て、音のしたベランダに走っていった。

「何だ、これ!?」

大粒の雨が吹きこむベランダにあったのは、“羽根”だった。しかも広げれば2、3メートルはあろうかという巨大な白い“羽根”。

「何だよ、これ?何かのイタズラか!?」

直接手で触るのは気が引けたので、恐る恐る足でそれを突っついてみる。よく見るとその羽根には、ところどころに赤黒いシミがついていた。

「勘弁してくれよ!こんなもん、人んちのベランダに捨てんじゃねぇよ!!」

だんだんムカついてきたオレは、再びびしょ濡れになったTシャツと短パンを着替えようと一旦部屋に戻った。あんなものがベランダにあるのは気味が悪いけど、明日の朝にでも捨てに行けばいいだろ。でも一体どうやってあんな大きなもの、うちのベランダに?一応10階だぞ?オレの部屋。オレは合点がいかないまま、すっかり湯冷めした体を暖めようと、冷蔵庫からビールを取り出した。ビールを開けながら、怖いもの見たさでベランダをのぞき込むと、気のせいか白い羽根が少し動いたように見えた。関わりたくなかったオレは、雨のせいで動いたように見えたんだと自分に言い聞かせ、カーテンを閉めた。

その後、ビールを2本開け、ベッドに入った。

「寝れねぇ…」

いつもならベッドに入り、ものの数分で眠りに落ちるのに、どうしても窓の外のものが気になって、眠るどころか逆に意識が冴えてきてしまう。

「あー、もうっ!!」

オレは思いきってガラス戸を開けた。するとやっぱり、羽根は小刻みに揺れていた。

「な、何だよ〜!オカルト担当は相羽ちゃんだろ!?ふざけんなよ〜!」

そう言いながら、かなりのへっぴり腰で羽根に近づく。そしてもう少しで手が届くと思ったとき、いきなり羽根は水しぶきを飛ばしながら、大きく羽ばたいた。
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